釣りや観光で利用される渡船業は、海や河川といった自然環境を相手にする業態であるため、安全対策が非常に重要視されています。多くの利用者が疑問に感じるのが「渡船屋は営業許可の条件として保険に入っているはずなのに、なぜお客からも保険代を取るのか?」という点です。本記事では、渡船業の保険事情と、利用者に請求される保険料の正当性について詳しく解説します。
渡船業における営業許可と保険加入の関係
渡船業を営むには、各都道府県の港湾管理者や水域を管轄する行政機関からの営業許可が必要です。特に遊漁船業などでは「小型船舶の安全規則」などに基づき、事業者側に対して損害保険や賠償責任保険への加入が求められるケースがほとんどです。
つまり、「保険に加入していないと営業許可は下りない」というのはある程度正しいと言えます。ただし、加入が義務化されているのは、あくまで船の運行に関する賠償責任などに関するものであり、お客一人ひとりに対する傷害補償などとは別物であることが多いのです。
別途請求される保険料の正体とは?
渡船利用時に「保険代」として数百円を別途請求されることがあります。これは、多くの場合、レジャー保険・搭乗者傷害保険・団体傷害保険などを指しており、業者が乗客全員を対象に加入している日割り・時間帯別の保険に充当されています。
これらの保険は、たとえば船の乗降中の事故や、船上での転倒、釣り道具でのケガなど、業者の賠償責任が発生しない場面でも補償されることがあるため、個人の安心を補完する役割を持っています。
法的に問題はないのか?
保険料を明示し、料金に含めるのではなく別途徴収するスタイルについて、法的には明確な禁止はされていません。ただし、「乗船料に含まれている」と誤認させるような表示や、「強制保険の重複徴収」のように誤解を生む運用は避けるべきとされています。
業者側としても、「任意保険代」「搭乗者補償分」など、名称と内訳を丁寧に案内することで、トラブルを回避しやすくなるため、適切な情報提供が求められています。
過去の事例から見るトラブル回避のヒント
実際に、ある地域の渡船業者が「保険込み」と言いながらも乗客のケガに補償がなかったことでクレームに発展した事例もあります。このようなケースでは、業者が加入していたのは賠償責任保険のみで、乗客個人への補償が対象外だったことが原因でした。
一方で、保険料を別途徴収し、その内容(例:傷害保険で1日○円)を明示していた場合、利用者側も理解したうえで契約しているとみなされ、法的にも問題がないと判断されています。
まとめ:渡船屋の保険料徴収には一定の合理性がある
渡船業者が加入する保険と、乗客に請求される保険料は目的が異なるため、両方が必要になることもあります。重要なのは、その保険が何の補償を対象にしているのかを利用者が理解し、事前に納得して支払うことです。
不安な場合は、乗船前に「この保険料は何のためのものか」「どこまで補償されるのか」を確認しておくと安心です。業者側にも説明責任があるため、疑問があれば遠慮なく問い合わせてみましょう。
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