賞与の計算は人事・経理担当者にとって非常に重要な業務のひとつですが、実務上の取り扱いに迷うことも多いです。特に「前月の給与額」を基準とする場合、どの金額をベースにするのかが分かりづらく、「振込額を使っていいのか?」「社会保険料や税金はどう扱うのか?」といった疑問が多く寄せられます。この記事では、賞与計算の根拠や判断基準についてわかりやすく解説します。
賞与計算における「前月給与額」とは?
賞与額を算出する際に用いられる「前月の給与額」は、一般的に総支給額(額面給与)または社会保険料控除後の金額を指します。
つまり、「振込額(手取り額)」ではなく、税引き前の金額であることが原則です。具体的には次の2つがよく使われるケースです。
- 総支給額:基本給、残業代、各種手当を含めた給与額(税金や保険料控除前)
- 社会保険料控除後の額:健康保険・厚生年金・雇用保険・介護保険などを差し引いた金額(税金は含まない)
住民税や所得税は控除対象ではない理由
住民税や所得税は、あくまで従業員の納税義務に基づいた個人負担のため、賞与計算の基礎となる「支給額の調整要素」には含めません。
そのため、「実際の振込額(手取り額)」を賞与計算の基準にするのは誤りであるケースがほとんどです。
税理士事務所によって運用方針が異なる場合もありますが、税や社会保険制度の実務に即しているのは、住民税や所得税を含めない方法です。
社会保険料を引いた額を使うケースもある
一部の企業や団体では、制度や社内規定により「社会保険料のみを控除した後の額」を前月給与とすることがあります。これには以下の理由があります。
- 賞与支給額に社会保険料が反映されるため
- 賞与支給時の保険料計算と整合性を取るため
この場合、健康保険料・厚生年金・介護保険料・雇用保険料のみを差し引いた金額を基礎にします。
実際の計算例:前月給与30万円の場合
仮に前月の総支給額が300,000円で、以下のような控除がある場合。
- 健康保険料:15,000円
- 厚生年金:27,000円
- 雇用保険:900円
- 所得税・住民税:18,000円
振込額(手取り)は約239,100円ですが、賞与計算では以下のいずれかを使うケースが多いです。
- 総支給額(300,000円)
- 社会保険料控除後の額(300,000円 – 42,900円 = 257,100円)
239,100円(手取り)は使わないのが原則です。
結論:賞与計算に使うのは「手取り」ではなく「支給額ベース」
賞与の算定に使用する「前月給与額」は、原則として税引前の金額(額面)または社会保険料控除後の金額を使用します。住民税や所得税は控除対象に含めないのが一般的です。
もし社内規定や税理士の指導により別の方法が取られている場合は、その根拠を文書で確認しておくと、後々の混乱を防げます。
まとめ:正しい基準で賞与を計算しよう
賞与の計算は法的・実務的な基準に基づいて行うことが大切です。「手取りベース」ではなく、「額面給与」や「社会保険料を引いた額」を用いるのが一般的であり、適切な基準で処理することでトラブルを回避できます。
不安がある場合は、国税庁のサイトや労務管理の専門家へ確認することをおすすめします。
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