少子化が深刻化する中で、政府は不妊治療の支援を拡充し、2022年からは体外受精などの先進医療も保険適用の対象になりました。その結果、社会保険財政にどのような影響があるのか気になる方も増えています。本記事では、不妊治療の制度と社会保険料との関係について、制度の背景と数字をもとにわかりやすく解説します。
不妊治療の保険適用と対象内容
2022年4月から、不妊治療の多くが保険適用になりました。主な内容は以下のとおりです。
- 体外受精・顕微授精が保険適用に
- 年齢制限は女性43歳未満
- 回数制限あり(例:40歳未満で6回まで)
これにより、従来高額であった不妊治療の自己負担が3割程度に軽減され、多くの夫婦が治療に踏み切りやすくなりました。
不妊治療による社会保険財政への影響
不妊治療が保険適用となったことで、確かに医療費全体は増加しましたが、社会保険料の上昇要因としてはごく一部です。以下が主な医療費増加の構成要因です。
- 高齢化による医療需要の増加
- 医療技術の進歩と高額化
- 慢性疾患(糖尿病、がん等)患者の増加
厚生労働省の発表によると、不妊治療の公費負担(保険適用以前)は年間300億円程度とされており、社会保険全体の医療費約44兆円(2022年度)の中での比率はわずか0.1%以下です。
高齢女性の不妊治療は無駄なのか?
40歳を超える女性の妊娠率が下がることは事実ですが、それを理由に保険適用を否定する意見には慎重な配慮が必要です。背景には次のような要素があります。
- 晩婚化に伴い妊娠希望年齢が高くなっている
- 全体の出生率回復が政策目的
- 治療成績をもとに一定の年齢・回数制限は設定済
つまり、費用対効果をある程度考慮した設計の中で保険適用が行われているといえます。
社会保険料が上がる主な理由
社会保険料の増加要因は多岐にわたりますが、以下が主要因とされています。
- 人口減少に伴う保険料負担者の減少
- 高齢者医療費の増加
- 介護保険制度の拡充
不妊治療の影響は限定的であり、むしろ将来的には出生数を増やすことで保険制度の維持に貢献する可能性すらあると専門家は指摘しています。
子育て世帯の負担感と制度の課題
不妊治療後に出産しても、保育所不足や教育費の負担から「子育てしづらい」と感じる家庭は少なくありません。社会保険料が高いこともその一因ですが、それは不妊治療そのものが原因というよりも、全体的な制度設計のバランスによるものです。
たとえば、所得に対する保険料率や、育児支援制度の地域差などが大きく影響しています。
まとめ
不妊治療が社会保険料増加の主因という見方は事実に基づくとは言えません。医療費全体に占める割合はごくわずかであり、むしろ少子化対策としての意義が重視されています。社会保険制度の持続可能性を考えるうえでは、不妊治療だけでなく、幅広い制度設計と人口動態の見直しが重要な論点といえるでしょう。
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