「子育て中の母親は働かなくても、もっと手厚い給付で生活できるようにすべき」という声がある一方、「現実的には厳しい」という意見も根強くあります。本記事では、現代の家計事情と給付制度、そして“働かない選択”が成立する条件を多角的に考察していきます。
かつての「父親だけが働く家庭」と今の違い
かつて昭和後期〜平成初期にかけては、「専業主婦+サラリーマン父親」の家庭が一般的でした。実際、1990年代の平均世帯年収は500〜600万円台でも、住宅価格や教育費、物価水準が今より相対的に抑えられていたため、十分にやりくりできる家庭も多かったのです。
しかし、現在は共働き世帯が主流であり、父親ひとりの稼ぎだけで家計を維持するのは難しくなっているのが現実です。背景には、可処分所得の伸び悩み、増税、社会保障負担増など複数の要因があります。
現代の給付制度は「働かない選択」を支えられるのか?
現在の子育て支援制度には、児童手当、出産育児一時金、保育料無償化などがあります。しかし、それだけで生活を支えるのは困難です。たとえば、児童手当(3歳〜中学生は1人月1万円〜1.5万円)だけでは、生活費の一部にもなりません。
政府も子育て支援の強化を検討していますが、家計全体を支える「ベーシックインカム」に近い規模の給付は現状の財政下では非現実的です。特に中間層以上には給付対象外となることも多く、期待できる制度は限られます。
“豊かに暮らす”には何が必要なのか
「働かずに、かつ豊かに暮らす」には以下のいずれかが必要です。
- ① 家族の誰かが高年収(例:年収1000万円超)
- ② 生活支出を極限まで抑えたミニマルライフ
- ③ 不労所得(投資収益・家賃収入など)がある
実際に「母親は家庭に専念し、父親が年収1200万円稼いで生活している家庭」もありますが、それは少数派であり、全体の5%未満とされています。
また、「豊かに暮らす」の定義も個人差があり、外食・レジャー・習い事が充実している生活を想定するなら、かなりの経済力が求められます。
現実的な選択肢:「時短・在宅ワーク」で収入を補完する
現代の選択肢としては、完全な無収入ではなく、家庭を優先しながらも少し働くというライフスタイルが現実的です。
たとえば、在宅ワーク、扶養内パート、週2〜3日のシフト勤務などは、子育てと両立しやすい働き方として定着しつつあります。年100万円〜150万円の収入でも、家計全体のバランスは大きく改善されます。
実例:フルタイムを辞めた後も“豊かさ”を感じる暮らし
30代女性Bさんは、第一子出産を機にフルタイム勤務を辞め、在宅ライターとして月収8万円を確保。「外食の回数は減ったけど、子どもと過ごす時間が増えて気持ちに余裕ができた」と話します。
一方で、節約や支出の見直しも欠かせず、スマホは格安SIMに切替、保険の見直しなどで月3万円の支出削減に成功したといいます。
まとめ:働かない暮らしは可能か?現実と理想のバランスが鍵
母親が働かずに給付だけで「豊かに暮らす」ことは、現在の日本の制度設計上では現実的とは言えません。ただし、家計の見直しと柔軟な働き方を組み合わせることで、“精神的に豊かな暮らし”は実現可能です。
大切なのは、「豊かさ」をどう定義し、自分たちのライフスタイルに最も合った選択をすること。理想論ではなく、具体的な数字と行動で向き合うことが、満足度の高い生活への第一歩になるでしょう。
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