子どものために備えてきた学資保険が、名義や手続きの問題で本来の意図と異なる結果になってしまうケースは少なくありません。特に親族名義で契約を行った場合、後に財産の扱いが変わってしまうリスクがあります。本記事では、学資保険における名義貸しの問題点、成年後見人制度との関係、そして対応策について詳しく解説します。
学資保険の名義貸しとは?
名義貸しとは、実際の契約者や資金負担者ではない第三者の名義を借りて契約を行うことです。例えば、健康上の理由などで親が契約できない場合、祖父母名義で契約し、実際の支払いは親が行うといったケースがこれに該当します。
一見問題なさそうに思える名義貸しですが、契約上の財産はすべて名義人のものとみなされるため、想定外のトラブルを招くことがあります。保険会社や金融機関も、名義人を基に財産権を判断します。
成年後見人が関わると何が変わる?
契約者が認知症などにより判断能力を喪失した場合、家庭裁判所を通じて成年後見人が財産管理を行うことになります。成年後見人には財産の保全義務があるため、たとえ実質的に他者が支払っていた保険であっても、名義人本人の財産として厳格に扱います。
そのため、契約時点で受取人を本人以外に設定していない場合、満期金は成年後見人が管理する本人の財産として扱われ、意向に関わらず家族が自由に使うことは困難になります。
銀行記録で「誰が支払ったか」は証明できる?
名義人とは別の人が入金をしていた証拠を示すには、銀行の入金記録が有力です。しかし、多くの金融機関では取引明細の保存期間が10年程度であるため、18年分の証明は現実的に難しいのが実情です。
記録が残っていても、振込でない現金入金の場合は入金者が誰かは記録されません。そのため、支払い者を立証するには、公的証明や第三者証言を含む複数の証拠が必要となり、非常にハードルが高くなります。
弁護士を介して取り戻す方法はあるのか
法的に契約者や受取人の変更が認められない限り、満期金を取り戻すのは非常に困難です。しかし、弁護士を通じて「実質的な所有者は自分である」と主張する手続きを行うことは可能です。
ただし、成年後見人制度は名義人の保護を目的とするため、証拠不十分な場合には返還請求が認められない可能性が高く、費用対効果を含めて慎重な判断が必要です。法的交渉には一定のコストがかかるため、信頼できる弁護士への相談が必須です。
保険契約時に確認すべき3つのポイント
- 契約者と実際の支払者が一致しているか
- 受取人が明確に定められているか
- 将来的なリスク(認知症・相続など)を見越しているか
これらの項目を確認することで、万が一のトラブルを避けることが可能です。特に受取人を子どもにしておくことで、親族間の財産トラブルを避けやすくなります。
まとめ:学資保険の名義設定は将来を見据えて慎重に
名義貸しによる学資保険契約は、契約時には便利に思えても、後々に大きな問題を引き起こすリスクがあります。名義人の財産とされることで、成年後見人による管理対象となり、家族が自由に使えなくなる可能性も。
契約時には受取人を誰にするか、支払者の記録をどう残すかなど、慎重に検討することが重要です。万が一トラブルが発生した場合には、信頼できる弁護士に早めに相談しましょう。
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