現在、パートやアルバイトなどの短時間労働者に対しても、一定条件を満たせば社会保険(厚生年金・健康保険)への加入が義務付けられています。特に「週20時間以上の勤務」「月収88,000円以上」などの基準は、働く人にとっても雇用主にとっても大きな関心事です。本記事では、これらの基準の背景と、今後の制度改正の見通しについて詳しく解説します。
社会保険加入の現行基準とは?
現在、社会保険の加入が義務づけられる条件は以下の通りです(2024年4月現在)。
- 勤務先の従業員数が51人以上の企業
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月収が88,000円以上(年収106万円以上)
- 勤務期間が2か月を超える見込み
- 学生ではないこと
これらの条件を満たす場合、企業は社会保険への加入手続きを行う義務が発生します。これはいわゆる「106万円の壁」としても知られています。
88,000円の収入基準はなぜ設けられたのか?
この月収基準は、短時間労働者に対しても一定の収入がある場合は、将来の年金や医療保障の面で手厚い制度に加入してもらうという目的で導入されました。パートやアルバイトでも「将来の生活基盤を支える仕組み」が必要であるという政策的意図があります。
その一方で、この基準が「就業調整」や「労働時間の抑制」につながってしまうという指摘もあり、近年は制度の見直しが議論されています。
社会保険適用のさらなる拡大予定は?
厚生労働省は「働き方改革」の一環として、社会保険適用のさらなる拡大を段階的に進めています。すでに2022年には101人以上の事業所、2024年には51人以上の事業所まで適用範囲が広がりました。
今後は「従業員数の制限」や「月収88,000円の壁」についても緩和・撤廃の方向で議論が続いていますが、2025年度以降にさらなる拡大が検討される可能性が高いと見られています。現時点で正式な「撤廃時期」は決まっていませんが、社会保障審議会などでの議論が進めば、近い将来の法改正があり得ます。
今後の加入条件はどう変わる?
仮に「88,000円の収入基準」が撤廃された場合、週20時間以上勤務していれば収入に関係なく社会保険に加入することになる可能性があります。これは多くの非正規労働者にとって年金や医療保険の充実という意味でメリットですが、一方で手取りの減少を招く可能性もあるため、慎重な制度設計が求められます。
また、企業にとっては保険料の負担増にもなるため、制度変更がある場合は準備期間や周知期間が設けられると考えられます。
企業・労働者それぞれの備え方
企業側としては、制度改正の動きに備えて、就業規則や労務管理体制の見直しを早めに行うことが重要です。特にパート・アルバイトを多く抱える小規模事業者は影響を大きく受けるため、厚生労働省の特設ページなどをチェックし、最新情報を把握しましょう。
働く側にとっても、「手取り重視」から「将来の保障」重視への意識転換が必要な時期に差し掛かっていると言えます。
まとめ:制度改正は時間の問題。早めの情報収集を
現在のところ「月収88,000円以上」の基準撤廃は未定ですが、政府・厚労省は適用拡大に向けた方向性を示しており、数年以内に制度が変わる可能性は高いです。
制度変更に伴う影響を最小限に抑えるためにも、企業も労働者も正確な情報に基づいた準備が重要です。引き続き、法改正の動向に注目していきましょう。
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