資産形成や相続対策を目的に注目される一時払終身保険ですが、利率の見えにくさや元本保証とのバランスが判断を難しくしています。例えば「100万円が10年後に109万円になる」という設計について、それが本当にお得なのか、どんなリスクや利点があるのかを冷静に分析してみましょう。
一時払終身保険とは何か?
一時払終身保険とは、契約時に保険料を一括で支払い、その後の保険期間中は保険料の支払いが不要な生命保険です。保険金は契約者の死亡時に支払われ、同時に資産運用の機能も持ち合わせています。
特に近年では、利息のつく金融商品として注目され、銀行預金の代替として選ばれることもあります。ただし、商品によって運用方針や利率は異なります。
「100万円が10年後に109万円」は良い利回りか?
10年間で9万円の増加、つまり年平均で単純計算すると約0.87%の利回りになります。これは元本保証型の金融商品としては比較的高い利率と言えます。
例えば、2024年現在の定期預金金利は0.01~0.2%程度が一般的です。メガバンクの10年定期預金と比べると、10倍近い利回りという計算になります。
他の金融商品との比較
実際に他の元本保証型または低リスクの投資商品と比較してみましょう。
商品種別 | 年利(目安) | リスク |
---|---|---|
定期預金(大手銀行) | 0.01~0.2% | 極めて低い |
個人向け国債(10年変動) | 0.5~0.7% | 低い |
一時払終身保険 | 約0.87%(本件) | 中(途中解約リスクあり) |
表のように、一時払終身保険は預金よりも高利回りで、国債と比べてもやや上回ります。
一時払終身保険の注意点
利回りだけで判断せず、以下のようなリスクや制限も考慮しましょう。
- 途中解約時の元本割れ:特に契約初期に解約すると、大きく元本を下回るケースがあります。
- 流動性の低さ:簡単に引き出せる商品ではないため、緊急の資金用途には不向きです。
- インフレリスク:年0.87%ではインフレに負ける可能性もあります。
このように、安全性と引き換えに、一定の制約が伴うことを理解しておくことが重要です。
利率よりも目的に合うかが重要
一時払終身保険の主な魅力は「死亡保険金」が非課税枠(500万円×法定相続人数)で受け取れる点です。つまり、資産承継や相続税対策として有効な手段です。
利率そのものが目的であれば、他の運用手段(債券、投資信託など)も視野に入れた方がよいかもしれません。
まとめ:一時払終身保険の利回りは悪くないが目的次第
「100万円が10年後に109万円になる」という利回りは、現在の低金利環境では決して悪くありません。特に元本保証を前提とした保険商品としては良好な水準です。
ただし、商品選定の際は利回りだけに注目せず、資金の流動性、相続対策、解約リスクなど、目的に応じた総合的な判断が大切です。加入前には必ず保険設計書の詳細や注意事項を確認し、不明点はFPや保険会社に相談しましょう。
コメント