近年、SNSや決済アプリなどでの誹謗中傷・なりすまし・不正利用といったトラブルが増えており、「発信者情報開示請求」に関心を持つ個人も増えています。TikTokやPayPayといったサービスに対して、個人でも開示請求ができるのか、どの程度の費用がかかるのかといった疑問について、現実的な視点から詳しく解説していきます。
発信者情報開示請求とは?その基本的な仕組み
発信者情報開示請求とは、インターネット上で違法な投稿や被害を受けた場合に、投稿者(発信者)の情報を特定するために、プロバイダなどに対して開示を求める手続きです。これにより、IPアドレスや契約者情報を取得し、損害賠償請求などの次の法的手続きに進むことが可能になります。
対象となる発信は、誹謗中傷、名誉毀損、プライバシー侵害、著作権侵害などが一般的です。たとえば、TikTokでの悪質な動画投稿や、PayPayでのなりすましによる取引などが該当する可能性があります。
個人で開示請求は可能か?制度上は可能だがハードルが高い
法律上、発信者情報開示請求は個人でも行うことが可能です。しかし、実務的には「個人では難しい」とされることが多く、その理由には以下のような点があります。
- 必要書類の作成や法的主張に専門的な知識が必要
- 裁判所への申立てが必要(簡易な通知だけでは不十分)
- 請求相手(TikTokやPayPay)の窓口が英語対応であることも多い
- 請求が2段階(コンテンツプロバイダと接続プロバイダ)に分かれる
そのため、弁護士に依頼して手続きを進めるケースが一般的です。
発信者情報開示請求にかかる費用の目安
発信者情報開示請求にかかる費用は、弁護士に依頼するかどうかで大きく異なります。
費用項目 | 目安 |
---|---|
弁護士費用 | 着手金:5万〜20万円程度/成功報酬:同額〜30万円程度 |
裁判所手数料 | 1,000円〜数千円程度(郵券含む) |
通信事業者への照会費 | 5,000円〜1万円程度 |
すべてを含めると、個人での実費でも10万円前後〜、弁護士依頼を含めると30万〜50万円ほどになるケースも珍しくありません。
TikTokやPayPayの対応方針と注意点
TikTokの運営会社であるBytedanceやPayPayは、利用規約において「法令に基づく場合に限り」情報開示に応じると明記しています。ただし、日本法人や弁護士経由の請求でないと窓口対応してもらえないケースもあるため、英文でのやりとりや国際送達の準備が必要な場合もあります。
また、投稿から一定期間が経過すると通信ログが削除され、開示が不可能になるため、迅速な対応が求められます。
費用対効果を考慮した現実的な対策
誹謗中傷や名誉毀損と感じた場合、必ずしも開示請求に進む必要はありません。以下のような対処も検討できます。
- 弁護士による削除請求(比較的低コスト)
- プラットフォームへの違反報告
- 証拠保全のための画面録画やスクリーンショットの取得
さらに、ネットトラブル専門の無料法律相談なども活用すると、費用を抑えつつ現実的なアドバイスが得られます。
まとめ:個人でも発信者情報開示請求はできるが、専門家の支援が現実的
発信者情報開示請求は制度上、個人でも可能ですが、費用や手続きの複雑さ、専門的知識の必要性から、実際には弁護士を通じて行うことが推奨されます。費用は10万〜50万円程度が相場で、状況に応じて他の手段を検討することも重要です。
もし発信者情報の開示を検討しているなら、まずは専門の弁護士に相談し、リスクとコストを理解した上で行動するのが最善のアプローチと言えるでしょう。
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