子どもの頃に親に預けた「お年玉」や貯金を、大人になっても返してもらえない──いわゆる「お母さん銀行」問題は、親子間でよくあるトラブルの一つです。中には通帳名義が自分なのに、親に預金の管理を握られていて自由に引き出せないというケースもあります。この記事では、自分名義の通帳に預けられているお金を取り戻すための注意点や法的な観点からの解説を行います。
「お母さん銀行」の実態とは
親が子ども名義の通帳を作り、そこにお年玉や祝い金を「預かる」形で貯めていくケースは多く見られます。親は善意で貯金しているつもりでも、子どもが成人した後に自由に使えないという状況が続けば、トラブルの火種となります。
特に「結婚したら返す」「一人暮らしを始めたら」などと条件を引き延ばされるケースでは、子の側が不信感を抱くのも当然です。
名義が本人なら基本的に「自分のお金」
預金通帳の名義が本人(成人している子ども)であれば、法的にはそのお金の所有権は名義人にあります。よって、その通帳・キャッシュカード・暗証番号が揃っていればATMや窓口で引き出すことは可能です。
ただし、実際に親が管理していて本人の意思で通帳等を入手したのではない場合、後々「無断で引き出した」としてトラブルになるリスクもあります。
勝手に引き出すと通知は来る?法的リスクは?
銀行によっては、大きな引き出しがあった場合にメール通知や利用履歴の通知が来ることもあります。ただし、通知が届いたとしても、名義人自身が引き出したのなら問題は基本的に生じません。
しかし、家族間であっても「盗んだ」などと親から主張されれば、家庭内トラブルとして深刻化する恐れがあります。特に、親が認知症など判断能力に問題を抱えている場合には、成年後見制度などの法的な枠組みが必要になることもあります。
親子間でも「名義預金」が相続時のトラブルに
名義預金とは、名義と実質的な管理者が異なる預金のことです。相続時には「本当に子どものお金だったのか?」が争点になることもあります。名義が子どもでも親が自由に使っていた場合、税務署に贈与と見なされ、相続税の対象になる可能性もあります。
逆に、成人後は名義人が自由に管理・使用できる状態であるべきというのが法の考え方です。親との話し合いで解決が難しい場合は、司法書士や弁護士に相談して家庭裁判所の調停を視野に入れることも検討しましょう。
実例:20代女性が取り戻したケース
ある20代女性は、自分名義の通帳に40万円があることを知り、成人後に親に返却を求めたが「結婚してから」と断られました。彼女は銀行に直接相談し、本人確認を行ったうえで通帳とカードの再発行を受け、自ら管理を開始。後に弁護士の助言により、法的にも問題ない手続きであることを確認しました。
親との関係は一時的に気まずくなったものの、「子どもが自立した」と親も納得したとのことです。
まとめ:感情ではなく法的・合理的に解決を
「お母さん銀行」の問題は、金額の多寡よりも「親子の信頼関係」が問われる繊細な問題です。とはいえ、通帳の名義が本人であれば、基本的にはその預金は本人のものであり、法的に取り戻すことは可能です。まずは冷静に話し合いを試み、それでも難しければ専門家に相談することがトラブル回避につながります。
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