年金制度は複雑で、とくに配偶者が亡くなったときの遺族年金や自分の年金との関係はわかりづらく、多くの人が「こんなはずじゃなかった」と感じる仕組みに直面します。特に、長年厚生年金を払ってきた妻が、結果的に専業主婦と同額しか受け取れないというケースは納得しにくいものです。本記事では、その仕組みと背景、対策の可能性について詳しく解説します。
遺族年金と老齢年金の基本的な関係性
65歳以上の夫が亡くなった場合、妻は「遺族厚生年金」を受け取ることができます。しかし、妻自身も老齢厚生年金を受け取る年齢に達しているときには、これらの年金の組み合わせに「併給調整」がかかり、全額が受け取れるわけではありません。
具体的には、自分の老齢厚生年金が遺族厚生年金の半額以上ある場合、自分の年金のみが支給され、遺族年金の支給が打ち切られます。反対に、自分の年金が少ない場合は、遺族年金の一部を上乗せして受給するという制度です。
なぜ専業主婦と同額の年金になってしまうのか?
この制度の落とし穴は、自分自身の老齢厚生年金が遺族厚生年金の半分に満たない場合、差額分だけしか上乗せされないため、結果的に「専業主婦と同額の遺族年金」しかもらえないという現象が起きるのです。
たとえば、夫の遺族厚生年金が月額10万円、妻の老齢厚生年金が月額4万円であれば、もらえる遺族年金は「10万円-4万円=6万円」。つまり、合計10万円受け取れるものの、老齢年金が高い場合には差額のみの受給となり、専業主婦と結果が同じになることがあります。
年金を払った意味がない?社会保険料の「もうひとつの価値」
たしかに、年金だけを見ると「厚生年金を払っていた意味がない」と感じてしまうかもしれません。しかし、厚生年金保険料には老齢年金以外にも、障害年金や遺族年金といった保障も含まれています。
たとえば、現役中に障害を負った場合に支給される障害厚生年金は、国民年金のみの加入者よりも金額が大きくなります。加えて、配偶者や子に万一のことがあった際の保障も、厚生年金に加入していたことで広くカバーされます。
年金制度の併給調整の仕組みとは?
年金制度には「年金の併給制限(選択制)」があります。これは、一人の人に複数の年金の支給権がある場合に、どれか一方を選ぶ、または差額調整されるというルールです。
特に影響が大きいのは以下の2つのパターンです。
- ① 老齢厚生年金+遺族厚生年金(調整あり)
- ② 老齢基礎年金+遺族基礎年金(重複不可)
このルールのせいで、「一方の年金が支給停止」「差額のみ支給」となるケースが多く、結果的に専業主婦と変わらない受給額に見えてしまうのです。
制度の背景と今後の見直しに期待すること
この仕組みの背景には、「年金は所得の代替であり、遺族年金は遺された人の生活保障である」という原則があります。しかし、現代では夫婦共働きが一般的となり、制度設計が実情と乖離してきているとの指摘も増えています。
現在、厚生労働省でも共働き世帯の年金格差や制度不公平について検討が進められており、今後の見直しに期待が寄せられています。
まとめ:制度を知ったうえで損をしない選択を
年金制度はわかりづらく、「損をしている」と感じることもあるかもしれません。ですが、ルールを正しく理解し、どのようなときに併給制限がかかるのかを知っておくことで、将来的な備えや選択肢が見えてきます。
不安がある方は年金事務所で年金見込み額や受給シミュレーションを依頼することをおすすめします。知識を持つことで、納得のいく老後設計につなげていきましょう。
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