高額な納税に悩む中小企業経営者や個人事業主にとって、「車の購入による節税」はよく語られる手法のひとつです。しかし、その実態を正しく理解していないと、期待した節税効果が得られないばかりか、税務調査で否認されるリスクもあります。この記事では、節税目的での車購入が本当に有効かどうか、どのように計画すれば効果的なのかをわかりやすく解説します。
車を購入することでなぜ節税になるのか
事業に使用する車両は「固定資産」として計上でき、購入金額に応じて減価償却費を毎年の経費として計上できます。これにより、所得が圧縮され、課税所得が減少し、結果的に納税額が下がります。
たとえば500万円の新車を購入した場合、法定耐用年数(普通乗用車で6年)に基づき、初年度から数年間にわたって減価償却費として分割して計上できます。ただし全額が一括で経費になるわけではない点に注意が必要です。
経費として認められる条件とは?
もっとも重要なのは、その車両が「事業に使用していること」を証明できるかどうかです。プライベートでの使用が主であると判断されれば、減価償却も経費も否認されます。
具体的には、以下のような対応が求められます。
- 車両の使用目的を記録する(運行日報など)
- 事業専用の駐車場を用意する
- 会社名義で購入・登録する
- 燃料代や保険料も事業口座から支出する
これらが整っていない場合、節税目的での車購入はリスクを伴います。
節税に効果的な車の選び方
経費として計上する上で重要なのは「購入価格」ではなく「減価償却費」と「実際の使用状況」です。よく聞かれる「何年落ちの車を買うべきか」という点ですが、実務上は以下のポイントが重要です。
- 新車:価格は高いが耐用年数も長く、償却期間が6年(普通車)
- 中古車(1年以上経過):最短2年で償却可能。短期で経費化したい場合に有利
たとえば3年落ちの中古車(事業用軽自動車)を200万円で購入し、2年で全額償却する場合、初年度100万円の減価償却費を経費として計上できます。
「いつ売却するか」で税務上の扱いは変わる
車両を売却した場合、売却益が出ると「固定資産売却益」として課税対象になります。逆に売却損が出た場合は、損金として処理できます。
減価償却が終わった後に高く売却すると、思わぬ利益計上が必要となり、節税どころか課税強化になることも。売却タイミングは減価償却スケジュールと合わせて戦略的に決めるのがポイントです。
税理士が節税アドバイスを避ける理由
節税には合法的な範囲と、グレーゾーン、そして脱税とみなされる違法行為の境界線が存在します。税理士が明言を避けるのは、法的リスクや過去の税務調査経験から慎重になる傾向があるためです。
そのため、自社の収支・事業実態に基づき、税務リスクと節税効果のバランスを踏まえて判断する必要があります。
まとめ:車購入による節税は「条件付き」で効果がある
車を使った節税は、正しく計画すれば有効な手段ですが、「買えば自動的に節税できる」わけではありません。事業実態との整合性、経費計上の根拠、売却時の処理などを含め、慎重に進めるべきです。
具体的な金額や購入時期については、信頼できる税理士や会計士に個別相談し、根拠のある計画を立てるのが最も確実な方法です。
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