賞与(ボーナス)を受け取るとき、手取り額を気にする方は多いはずです。特に、社会保険料や雇用保険料、所得税が引かれないラインがあるのか、気になるところでしょう。実際には、「いくらまでなら課税されないのか」という点には明確な基準があり、ケースによっては非課税にできることもあります。本記事では、そうした非課税ボーナスの境界線について、制度の仕組みや実務的な注意点を含めて解説します。
そもそも賞与とは?給与とどう違う?
賞与とは、会社が従業員に支給する一時金のことで、通例的には年に1~2回支給されるものを指します。月々の基本給とは異なり、業績や評価などに応じて変動する点が特徴です。
なお、給与や手当と同じく課税対象となり、社会保険や雇用保険の計算対象にも含まれます。
社会保険・雇用保険・所得税がかからない条件
賞与が完全に非課税になるケースはかなり限定的です。以下のようなケースであれば、一定の控除や非課税扱いになることがあります。
- 支給額が極端に少額(例えば1,000円など)で、端数調整や経費精算的な性質がある場合
- 会社が「賞与」としてではなく、「一時金」や「寸志」などの名目で処理し、所得税法上の「賃金」と見なされない場合
- 非常勤職員・短時間労働者などが「社会保険適用外」である場合(週所定労働20時間未満など)
ただし、ほとんどの正社員やフルタイム労働者は、1円でも賞与を受け取ると社会保険・雇用保険・所得税の対象となります。
実際の非課税ラインはいくらか?
制度上、明確な「非課税支給額の上限」は定められていません。基本的には、どんな少額でも課税対象とされます。ただし、各種保険料の徴収には最低等級の概念があります。
例えば、社会保険料(健康保険・厚生年金)には標準賞与額の上限や最低額があり、月額88,000円未満の賞与であれば保険料が比較的少額に抑えられるケースもあります。
ただし「保険料ゼロになる支給額」は基本的にありません。
実例:支給額が少額の場合の処理例
たとえば、5,000円の「賞与」や「寸志」を支給した場合。
- 社会保険料:ほとんどのケースで徴収対象
- 雇用保険料:2,000円以上支給されると対象になることが多い
- 所得税:源泉徴収されるが、扶養控除や甲欄適用で0円になる場合もあり
このように、「税金がゼロ」であっても、「社会保険料ゼロ」はまず期待できません。
名目変更で課税回避できる?注意点も
よくある誤解として、「賞与」という名目を「お祝い金」「手当」などに変更すれば税金がかからないと思われがちですが、実際には実質的に賃金性があるかどうかがポイントです。
税務調査や年末調整で修正対象になる可能性があるため、名目を変えての税逃れはおすすめできません。
まとめ:賞与は基本的に課税対象。少額でも要注意
結論として、社会保険・雇用保険・所得税のいずれかが「全くかからない」賞与額というのは、通常の雇用関係ではほとんど存在しません。支給方法や労働条件によって保険料の金額が変動することはありますが、非課税を狙って制度を無理に利用するのはリスクを伴います。
正確な処理のためには、会社の経理担当者や社会保険労務士に相談するのが安全です。制度を正しく理解したうえで、納得のいく形でボーナスを受け取りましょう。
コメント