相続においては、代表者が保険金や退職金をまとめて受け取るケースも多くあります。しかしその後、他の相続人に法定相続分に沿って振込む場合、形式を誤ると贈与と見なされることがあるため注意が必要です。この記事では、相続財産の分配方法と税務上の取り扱いをわかりやすく解説します。
相続財産と贈与の違いを理解しよう
相続とは、被相続人(亡くなった人)の財産を法定相続人が引き継ぐことを指します。一方で、贈与とは生前に金品などを他人へ無償で譲渡することです。
つまり、本来「相続財産」を法定相続分に従って分配するのであれば、それは贈与ではありません。ただし、その分配の手続きや証拠書類が不十分だと税務署に贈与と誤認される可能性があります。
代表相続人が受け取る生命保険金・退職金の扱い
保険金や退職金は、契約の内容や支給先によって性質が異なります。たとえば、生命保険金は「受取人指定」があれば、その人の固有財産となり、相続財産ではありません。
しかし、受取人が「相続人代表」や「法定相続人全員」とされている場合、受け取った金銭は実質的に相続財産とみなされ、遺産分割の対象となります。このとき、誰にいくら分配したかを明確にする記録が重要です。
法定相続分の振込が贈与と見なされないための工夫
法定相続分の分配をした場合でも、以下のような準備をすることで「贈与」と誤解されるリスクを避けられます。
- 遺産分割協議書を作成し、相続人全員の署名と印鑑を揃える
- 相続財産の内訳(預金・保険金など)と分配内容を記録する
- 各相続人への振込メモに「相続分配金」など明記する
- 通帳・メール・LINEなどの記録も保存する
これにより、税務署に「これは相続による分配です」と説明できる根拠となり、贈与税の対象外として扱われます。
非課税範囲内でも届け出が必要なケースは?
相続財産の合計が相続税の基礎控除(3,000万円 + 法定相続人×600万円)以内であれば、相続税の申告は不要です。ただし、不動産登記や保険金の分配内容によっては、市区町村や税務署から確認が入る場合もあります。
仮に相続税申告が不要な場合でも、遺産分割協議書の保管は将来的なトラブル防止のために必須です。保険会社や金融機関に提出しておくのもおすすめです。
生前贈与と相続の関係にも注意
すでに非課税枠(110万円)内で生前贈与を行っていた場合、その贈与は別途記録として保管しておきましょう。今回の相続での分配と明確に区別しておくことで、誤って「贈与が重複している」と見なされるリスクを防げます。
たとえば、「生前贈与分:毎年110万円」「相続分:分割協議書に基づき1,000万円」のように、明確に文書化しておくと安心です。
まとめ:正しく記録・文書化すれば贈与にはなりません
代表者がまとめて受け取った保険金や退職金を法定相続分に従って分配する場合、きちんと手続きを踏めば贈与にはなりません。ポイントは「証明できる形にしておくこと」です。
遺産分割協議書や振込記録、通帳の写しなどを保管し、必要があれば税理士や行政書士に相談するのも有効です。不安を感じる場合は、相続に詳しい専門家への無料相談を活用して、安心・確実な相続手続きを進めましょう。
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