日本の政局や経済政策をめぐって「もし山本太郎氏が総理になり、大規模な減税を断行したら、イギリスで起きた“トラスショック”のような経済混乱が起きるのではないか?」という議論がネット上でも注目されています。果たしてそれは現実的なのか?本記事では“メロリンショック”と揶揄される事態の可能性を、経済理論や過去の事例を交えて考察します。
そもそも“トラスショック”とは何だったのか?
2022年にイギリスのリズ・トラス元首相が打ち出したのは、財源の裏付けなく約450億ポンド規模の大幅な減税政策でした。結果として国債利回りが急上昇し、ポンド安、年金基金の流動性危機などが連鎖的に発生。トラス首相はわずか45日で辞任に追い込まれました。
市場が問題視したのは「財政規律の欠如」と「政策の一貫性のなさ」です。つまり、単なる減税そのものよりも、経済政策の信頼性が大きく問われた出来事だったのです。
山本太郎氏の経済政策の特徴とは?
山本太郎氏率いる「れいわ新選組」は、消費税の廃止や大胆な財政出動(政府支出の拡大)を掲げています。特にMMT(現代貨幣理論)を参考にした政策を主張しており、これは「自国通貨建て国債であればいくらでも発行可能」という考え方に基づいています。
このような考え方に基づく減税政策は、国債の発行残高がすでにGDPの2倍を超える日本において、財政規律のさらなる緩みと見なされる可能性があります。
“メロリンショック”は起きるのか?起きないのか?
仮に山本太郎氏が首相となり、減税や大規模財政出動を実施した場合、日本がイギリスのような“市場の反乱”に見舞われるかどうかは次の要素に左右されます。
- 国債の買い手(国内資金で賄われているか)
- 中央銀行(日銀)のスタンス(YCCや国債購入)
- インフレ期待と通貨信認
- 財政出動の規模と継続性
現時点では、日本の国債は大半が国内で保有され、日銀がイールドカーブ・コントロールを通じて金利上昇を抑えているため、イギリスとは構造が異なります。
ただし、財政の信頼性に疑問が生じたり、日銀が政策転換した場合、急激な円安や国債利回りの上昇が起きるリスクは否定できません。
市場と国民感情のバランスが鍵に
大胆な減税や財政出動が短期的には景気刺激となる可能性はありますが、金融市場や格付け機関がどう反応するかによっては、長期金利の上昇、円安、インフレ圧力という副作用が起きる可能性も。
また、減税の恩恵が国民に実感されるまでには時間差があるため、その間に起こる通貨の混乱や物価高騰が逆風となるリスクも考えられます。
過去の日本の事例と比較する視点
実は2000年代初頭、日本でも「国債増発による景気刺激」が試みられた時期がありましたが、デフレ脱却には至らず、結局財政再建が焦点となる流れに戻りました。
また、2012年以降のアベノミクスでは「大胆な金融緩和+財政出動+構造改革」の“三本の矢”が打ち出されましたが、消費税増税によって景気が腰折れし、最終的には持続可能な政策運営が重視されるようになりました。
まとめ:ショックを招くかどうかは政策の中身と信頼次第
「山本太郎が総理になって減税したらメロリンショックが起きるか?」という問いに対しては、単に“減税=ショック”という構図ではなく、その財源・実行体制・日銀との連携・市場との対話など総合的な政策運営次第だと言えるでしょう。
つまり、減税そのものが悪ではなく、どう実施し、どのように説明し、持続性があるかが問われているのです。
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