建設資材や住宅設備の卸売を中心に事業を行っていても、取付や設置といった工事も自社で請け負う企業は少なくありません。そうした場合に気になるのが「労働保険は一元適用になるのか?」という点です。今回は、卸売業と建設業を兼ねる事業者の労働保険適用区分について、制度の仕組みと判断ポイントを具体例とともに解説します。
労働保険の「一元適用」とは?
労働保険には「雇用保険」と「労災保険」があります。通常は業種ごとに保険料率などが決まるため、事業の種類によって適用が分かれます。ただし、建設業だけは特殊な扱いがされており、労災保険においては「事業ごと」に個別の適用単位が設けられる「二元適用」が基本です。
しかし、建設業であっても規模や事業の性質によっては、一元適用(他の業種と同様に一つの労働保険番号で管理)となることがあります。
建設業の一元適用となる主な条件
- 常時使用する労働者が概ね5人未満
- 注文を受けて工事を施工することが主たる業務でない
- 他の本業(たとえば卸売業)の延長で工事をしている
このような条件に当てはまる場合は、建設業であっても一元適用となることがあります。つまり、本業が卸売であれば、付随的に工事を行っていても建設業とみなされないケースがあるのです。
実例で考える:卸売業+取付工事をしている企業
たとえば、内装材や家具の卸売をメインとする会社が、パーテーション工事やシステムキッチンの設置工事も自社で行う場合、本業が「卸売業」であると認定されることがあります。
このような企業は、建設業の許可を持っていたとしても、実際の売上比率や従業員の配置、工事の受注形態によって「一元適用」とされる可能性が高くなります。
労働保険番号が同じ=一元適用の可能性
実際に下請業者に確認した際、「雇用保険と労災保険の番号が同じ」という場合は、その事業所が一元適用事業である可能性が高いです。これは厚生労働省が定める「労災保険事務処理の取扱い」に基づいて判断されます。
ただし、実際の適用区分は労働基準監督署の判断によるため、厚生労働省のガイドラインや地元の労基署に確認することが確実です。
一元か二元か迷ったときのチェックポイント
- 工事の受注形態:元請中心なら二元、付随的な作業なら一元
- 売上比率:建設業の売上が主であれば二元、それ以外は一元の可能性
- 従業員の職種と配置:現場作業者の比率が高ければ二元
- 労働保険番号:雇用保険と労災が同じなら一元の可能性大
上記をもとに、自社の状況を洗い出してみるのがおすすめです。
まとめ:建設工事が「付随的」なら一元適用の可能性あり
卸売業が本業で、工事はサービスの一部として提供している場合、建設業であっても一元適用となる可能性があります。労働保険の適用区分を正しく理解することで、不要な保険料負担や手続きミスを防ぐことができます。
最終的な判断は管轄の労働基準監督署が行うため、不安な場合は相談や確認をするのが確実です。
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