退職時に支給される退職金は、会社によって制度や支給方法が異なります。特に中小企業では、会社が加入している生命保険や養老保険の解約返戻金を原資とするケースも少なくありません。しかし「解約返戻金があるのに満額が支給されない」「業績や個人評価により減額される」といったケースには注意が必要です。
退職金制度は就業規則で定められているか
まず確認すべきは、会社の就業規則や退職金規程です。退職金制度が明記されておらず、「退職金は慣習的に支払っている」場合、支給額や基準は会社の裁量に委ねられる傾向があります。
一方、退職金制度が明文化されている場合には、評価や業績による調整の有無、算出基準、支給条件などが記載されているはずです。その内容が社員に周知されていたかどうかも、法的な妥当性を判断する重要なポイントです。
保険の解約返戻金と退職金の関係
企業が従業員の退職金準備のために加入している養老保険や定期保険の「解約返戻金」はあくまで会社の資産であり、直接従業員に権利があるわけではありません。
つまり、たとえ解約返戻金が300万円あったとしても、就業規則上で「退職金は業績や評価を加味する」とされていれば、支給額が満額でないことも法的には可能です。
業績や評価による退職金の調整は合法か
退職金の支給額に業績や評価を加味すること自体は、制度として明確に定められていれば合法です。ただし、その評価制度が不透明であったり、説明がなく減額される場合には、労働契約法や不利益変更の観点から問題視されることもあります。
特に「支給額の基準が曖昧」「満額出すとは最初に言っていた」などの場合は、労働基準監督署や弁護士への相談が推奨されます。
実例:保険原資で100万円あるのに支給は50万円
ある中小企業では、従業員1人あたり100万円相当の解約返戻金が積み立てられていたものの、業績不振を理由に「退職金は半額」とされました。
従業員が納得できず弁護士を通して確認したところ、退職金制度の就業規則に「業績および個人評価による調整可」の記載があり、支給額は妥当と判断されました。
退職前に確認すべき3つのポイント
- 退職金制度が就業規則に明記されているか
- 保険の解約返戻金の運用目的が開示されているか
- 支給額に関する説明や事前通知があるか
特に「退職金は保険で積み立てている」と言われた場合は、契約内容や返戻金の受取人が誰になっているか、確認できる範囲でチェックしましょう。
まとめ:減額されるかは制度と説明の明確さがカギ
退職金が保険を原資としていても、その支給額は制度設計と会社の説明次第です。業績や個人評価による減額が認められるかどうかは、就業規則にその旨が記載されているか、また従業員にその情報が周知されていたかによります。
納得できない場合や不明点が多い場合は、厚生労働省や地域の労働局、労働トラブル110番などに相談してみましょう。
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