経済的な理由などで国民年金の保険料を納めるのが難しいとき、「全額免除制度」を利用することで保険料の負担を減らすことが可能です。しかし、将来受け取る年金額にどのような影響があるのかは意外と知られていません。この記事では、年金の全額免除を受けた場合に老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金にどのような影響があるのかを詳しく解説します。
国民年金の全額免除とは?
全額免除制度は、所得が一定以下の人などが申請することで、保険料の納付が免除される制度です。免除期間中も「保険料を納めたもの」として一部の年金資格に反映されるため、未納とは異なります。
ただし、免除の種類によって将来の年金額や受給資格に影響する点には注意が必要です。
老齢基礎年金への影響:半額扱いになる
全額免除された期間については、原則として老齢基礎年金の計算において「1/2」としてカウントされます。
たとえば、全額免除期間が10年間ある場合、実際には5年分しか保険料を納めていないものとして年金額が計算されます。老後の受給額を減らさないためには、あとから追納(後払い)することも可能です。
障害年金への影響は?
障害年金の受給資格は、「初診日がある月の前々月時点で、一定の保険料納付要件を満たしているかどうか」で判断されます。
この際、全額免除された期間も「納付済み期間」としてカウントされるため、原則として障害年金の受給資格に影響はありません。
ただし、免除ではなく未納状態が続いた場合は、将来的に障害年金を受け取れない可能性があるため注意しましょう。
遺族年金はどうなる?
遺族年金(国民年金の遺族基礎年金)は、亡くなった方が一定の保険料納付要件を満たしている必要があります。こちらも、全額免除期間は「納付済み」とみなされるため、基本的には問題ありません。
ただし、未納がある場合は、遺族基礎年金の支給が受けられないこともあるため、免除の申請を確実に行うことが大切です。
免除を受けつつ将来の年金を増やす方法:追納と付加年金
全額免除で減額される年金をカバーする方法として、次の2つが有効です。
- 追納制度:免除から10年以内であれば、あとから保険料を納めて満額扱いにできます。
- 付加年金:月額400円を上乗せして納めることで、年金受給時に「200円 × 納付月数」の金額が上乗せされます。
将来の受給額に不安がある場合は、これらの制度を積極的に活用するとよいでしょう。
実際の事例:離婚後、養育費と資産で暮らすケース
例えば、45歳で離婚後に収入がない女性が、養育費(月10〜15万円)と貯金・投資3500万円を活用して生活している場合。全額免除の対象となる可能性があります。
このようなケースでも、障害年金や遺族年金の「資格」を失うことはありませんが、老齢年金の受給額は減額されるため、将来的な資産計画と照らして追納を検討すると安心です。
まとめ:免除制度は生活支援だが、老後対策は自分次第
国民年金の全額免除は、生活が困難なときの支援制度として非常に有効です。障害年金や遺族年金の受給資格には影響しませんが、老後の年金額が減る点は忘れてはなりません。
免除→追納→資産運用の3ステップで、人生後半の不安を減らす工夫が重要です。
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