年金の受給開始時期は人生後半の生活に大きな影響を与えるため、いつ受け取るかの判断は慎重に行いたいものです。特に、65歳以降も就労を継続する方の場合、年金の繰下げ受給によるメリットと税・社会保険料のバランスを考える必要があります。
65歳から受給するメリット
65歳から年金を受給すると、すぐに収入として受け取りを開始できるため、貯蓄に回すなど自由に資金を活用する選択肢が広がります。また、働いていても給与と年金の合算が「在職老齢年金」の制限額(47万円)を超えなければ、年金の支給停止は原則ありません。
たとえば、年収400万円(月33万円前後)+年金月10万円で合算月43万円の場合、満額受給が可能であると考えられます。
繰下げ受給の仕組みと利点
年金の受給開始を66歳または67歳まで遅らせると、1ヶ月あたり0.7%ずつ支給額が増加します。66歳なら8.4%、67歳なら16.8%の上乗せになります。
仮に月10万円の年金であれば、67歳からの受給なら月11万6800円に増える計算です。長生きするほど、繰下げ受給の方がトータルで得になります。
税金・保険料の観点からの比較
働きながら年金を受給する場合、年金も「雑所得」として課税対象になります。以下は比較のポイントです。
- 65歳から受給:年金収入が課税所得に加算されるが、給与との合算でも控除枠があるため、大きな負担増にはならないケースが多い。
- 繰下げ受給:年金受給前は給与のみ課税対象となるため、社会保険料や介護保険料の計算が比較的シンプル。ただし、退職後に繰下げ受給を始めると、年金額は増える一方、他の所得がない分課税対象が集中しやすい。
将来のライフプランとのバランスを考慮
ご本人が「受給した年金はすべて貯金に充てる」予定であるなら、65歳から受給するメリットは大きくなります。万が一、67歳以前に急病などで働けなくなった場合も、すでに年金受給中であれば生活への影響は少なくなります。
逆に、長寿を前提に資産寿命を延ばしたい方や、ご夫婦ともに収入が安定している場合は、繰下げによる年金の増額が将来的に安心材料になります。
夫婦で考える最適な年金戦略
ご主人も会社員で厚生年金を継続中であるため、ご夫婦の年金を組み合わせてトータルで生活設計する視点が大切です。特に以下の点に注目しましょう。
- 配偶者が厚生年金加入中は、社会保険の扶養などには影響しない
- 配偶者が退職後に世帯年収が下がると、繰下げによる上乗せ分が老後の収入補填に有効
- 配偶者が先に亡くなった場合の「遺族厚生年金」の対象にもなる
まとめ:65歳受給のメリットを活かしつつ、繰下げも柔軟に検討を
年金の受給タイミングは、健康状態、働く意欲、家計のバランスなどさまざまな要因を考慮して決めるのがベストです。
今回のように、給与と年金の合算が在職老齢年金の上限に達しておらず、受給額をそのまま貯蓄に回すことが可能であれば、65歳からの受給は合理的な選択肢です。繰下げによる増額の魅力もありますが、将来の不確実性を考えると、現在の安定を優先するのも一つの戦略といえるでしょう。
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