役員賞与の社会保険料は損金算入できる?事前届出の有無で異なる法人税処理の注意点

税金

中小企業の経営者や経理担当者にとって、役員賞与の取り扱いは税務上非常にデリケートな論点です。特に「事前確定届出給与」として届け出を行っていない場合、賞与そのものは損金不算入となりますが、それに関連する社会保険料の会社負担分がどうなるのか、疑問を持つ方も多いでしょう。本記事では、役員賞与に伴う社会保険料の損金処理について、税務上・会計上の観点からわかりやすく解説します。

そもそも「事前確定届出給与」とは?

法人が役員に対して賞与(いわゆるボーナス)を支給する場合、それを損金に算入するには、税務署に「事前確定届出給与」の届出書を提出する必要があります。この届出をしていない賞与は、原則として法人税上損金不算入となります。

これは、法人税法第34条第1項および法人税法施行令第69条で定められており、役員報酬の過度な自由度を制限することで課税ベースの公平性を保つ趣旨があります。

社会保険料の会社負担分は損金にできる?

結論から言うと、役員賞与にかかる会社負担分の社会保険料(健康保険・厚生年金など)は、賞与が損金不算入であっても損金算入が可能です。

これは法人税基本通達9-2-31などにより、社会保険料は「法定福利費」として法人が負担する義務があり、役員報酬の損金性とは別に費用として認められるためです。

実例:事前届出なしで役員賞与を支給した場合

たとえば、代表取締役に対して事前届出なしで100万円の賞与を支給したとします。この場合、法人税の計算上、賞与100万円は損金にできません。しかし、賞与にかかる健康保険料(会社負担分)が約10万円だったとすると、この10万円は損金に算入できます。

このように、賞与本体とそれに付随する法定費用は税務上の取り扱いが異なるため、それぞれ分けて記帳・申告する必要があります。

勘定科目と処理方法の注意点

損金算入される社会保険料は「法定福利費」として処理されます。役員賞与本体は「役員賞与」や「損金不算入費用」などで区別するのが一般的です。税務調整の際に混同しないよう、科目ごとにしっかり分けて管理しましょう。

また、税理士に相談する際も「どの費用が損金になるのか」「法人税申告書の別表でどのように調整するのか」を確認すると、より正確な処理が可能です。

賞与の支給予定があるなら、事前届出を検討すべき

今後、役員に賞与を支給する予定がある場合は、所轄税務署への事前届出を検討しましょう。届出期限は、原則として「定時株主総会の日から1か月以内」であり、この期間を過ぎると賞与は損金にできません。

損金不算入となると、法人の課税所得がその分増え、税負担が重くなるため、できるだけ適切な手続きを踏むことが望ましいです。

まとめ:社会保険料の損金性は原則として認められる

役員賞与を事前届出なしで支給した場合、その賞与自体は損金不算入となりますが、関連する社会保険料(会社負担分)は「法定福利費」として損金算入が認められます。処理を誤ると税務調査で指摘される可能性もあるため、科目ごとに明確な仕訳を心がけましょう。

今後の税務リスクを減らすためにも、税理士などの専門家に相談のうえ、制度に即した役員報酬設計を行うことが大切です。

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