企業が福利厚生の一環として実施している「社内預金制度」。従業員にとって貯蓄手段のひとつとして魅力がある一方、会社側には金利負担という課題もあります。近年、物価上昇や他の金融商品の利回り上昇に伴い、労働組合などから利率アップの要望が出るケースが増えています。この記事では、社内預金の利率相場や、利率アップによるメリット・デメリットを整理し、企業としての対応のヒントを探ります。
現在の社内預金利率の相場とは?
社内預金制度における利率は企業ごとに異なりますが、法律で定められた最低利率(2024年現在は0.5%)を下回ることはできません。1%以上に設定している企業は厚遇といえる部類であり、0.5~1.0%がボリュームゾーンとなっています。
最近では、長らく続いた超低金利時代からの脱却ムードもあり、銀行の定期預金金利が上昇傾向にあることから、「せめて社内預金も同等以上に」とする声が高まりつつあります。
利率を上げることの企業側のメリット
社内預金の利率を引き上げることには、企業側にも以下のような利点があります。
- 従業員満足度の向上
- 長期勤続や離職防止の一助となる
- 福利厚生の充実による企業イメージアップ
たとえば、1.0%から1.5%に引き上げた企業では、「社員の資産形成に寄り添う企業」として採用活動にも良い影響が出たという声もあります。
利率アップに伴うリスクとデメリット
一方で、利率を上げることで次のようなデメリットも生じます。
- 会社の金利負担が増加(特に多額の預入がある場合)
- 将来的に金利を下げづらくなる(制度的硬直化)
- 制度管理コストや会計処理の複雑化
仮に1億円の社内預金があった場合、利率を1%から1.5%に上げると年間の金利負担は50万円増となります。このコストが福利厚生費として妥当かどうか、企業の財務体質と照らして慎重な検討が求められます。
従業員側にとってのインパクト
従業員から見ると、わずか0.5%の差でも長期間預けることで大きな差になります。たとえば100万円を1.0%で3年間預けた場合の利息は約3万円、1.5%であれば約4.5万円となり、その差は1.5万円にもなります。
また、物価上昇が続く中で、実質利回りの観点からも高金利の社内預金はインフレヘッジの手段として評価される可能性があります。
利率改定の際に考慮すべきポイント
社内預金の利率を見直す場合、以下の点を踏まえるとスムーズです。
- 労使協議を経た上での制度改定
- 他の金融商品との相対的競争力
- 社内預金残高の推移と利用者の傾向
- 金利引き上げ後の企業負担試算
利率アップの代替策として、積立型の社内財形貯蓄制度や、iDeCo・企業型DCとの併用を検討するケースもあります。
まとめ:バランスのとれた利率設定がカギ
社内預金制度は、従業員の資産形成支援と企業の財務的バランスの両立が求められる制度です。利率を上げることで得られる従業員満足度の向上と、それに伴うコスト増との兼ね合いを丁寧に見極めながら、持続可能な福利厚生の一環として制度設計することが重要です。
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