企業型確定拠出年金(企業型DC)では、運用商品が定期的に見直され、新たにコスト(信託報酬)の低い商品が導入されることがあります。これに伴い、類似の既存商品が除外対象となるケースも増えています。本記事では、商品除外時に「スイッチング(資産の移し替え)」を行うべきか、それとも既存の資産はそのまま保持して新規積立だけを新商品で開始すべきか、判断のポイントを詳しく解説します。
確定拠出年金で商品が除外される理由とは?
企業型DCでは、よりコスト効率の良い商品への見直しを目的として、同一運用方針の商品が重複している場合、信託報酬が高い商品が除外対象になります。これは長期投資においてコスト削減がリターンに直結するため、制度全体として健全な方向性です。
たとえば、同じ「先進国株式インデックスファンド」でも、信託報酬が0.3%の商品から0.1%のものに置き換えられることがあります。新商品が導入されることで既存商品は購入できなくなり、運用資産の行方が重要になります。
スイッチングの基本:一括か積立のみかの判断軸
スイッチングとは、既存資産を別の商品に移す手続きです。除外対象商品に資産が残っている場合でも自動的に他商品へ移行されるわけではなく、多くの場合、加入者が自身で移し替えの判断をする必要があります。
判断のポイントは「残された商品での運用に問題がないか」と「新しい商品のパフォーマンスやコストメリットがどれだけ大きいか」です。一括でスイッチングするのが心理的に不安であれば、分割スイッチングという選択肢もあります。
実例:信託報酬が0.2%下がった商品へのスイッチング
たとえば、Aさんが過去5年間にわたり0.3%の信託報酬の商品で400万円を積み立ててきたとします。新たに導入された商品は信託報酬が0.1%。運用効率が改善されることから、Aさんは今後の積立は新商品に変更し、既存資産は徐々に分割でスイッチングする方法を選びました。
このように段階的に移行することで、市場の価格変動リスクを分散しつつ、手数料の恩恵を享受できます。特に長期運用においては信託報酬の差が数十万円単位のリターン差に広がることもあります。
信託報酬以外にもチェックすべき項目
信託報酬は大切な判断軸ですが、以下の点も合わせて確認しておくと安心です。
- 運用実績(トラッキングエラー):指数との乖離が小さいか
- 資産規模:小さすぎると繰上償還リスクがある
- 運用会社の信頼性:継続性や透明性のある運営か
たとえば、低コストでも実際の運用成績が悪ければ元も子もありません。信託報酬だけでなく、総合的なパフォーマンスで判断しましょう。
心理的な不安への対処法
まとまった資産を一気に動かすのは不安という方には、分割スイッチング(ドルコスト平均法の応用)がおすすめです。たとえば、毎月10万円ずつ新商品に移すといった方法で、価格変動リスクを抑えながら資産を移行できます。
また、企業型DCでは一度にスイッチングできる回数や金額に制限があることもあるため、事前に運用機関のルールも確認しておきましょう。
まとめ:新商品へのスイッチングは“計画的に段階的に”が基本
企業型確定拠出年金で新たに低コストな商品が導入された場合、運用効率の観点からスイッチングは検討すべき選択肢です。ただし、一括での移行に不安があるなら、積立は新商品、既存資産は分割スイッチングという方法も有効です。
重要なのは「信託報酬だけで判断しない」「運用方針に合った商品を選ぶ」「心理的負担を避ける工夫をする」こと。無理なく資産を有効に運用するために、今こそ見直しのチャンスかもしれません。
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