「平均貯蓄額は1,500万円」「中央値は200万円」などの情報を目にすると、自分の家計と比べて不安になったり、疑問を持つ方も少なくありません。こうした統計データは一体どのように調査されており、どこまで信用して良いのでしょうか。この記事では、平均貯蓄額などの統計の仕組みや見方について、実例を交えながら解説します。
平均と中央値の違いを理解する
まず前提として、「平均」と「中央値」はまったく別の性質を持つ指標です。平均はすべての値を合計して件数で割った数値ですが、中央値はデータを小さい順に並べたときに真ん中に来る値です。
例えば、5世帯がそれぞれ100万円、150万円、200万円、250万円、5,000万円の貯蓄をしているとします。この場合、平均は1,140万円ですが、中央値は200万円になります。これが「平均は高いのに中央値は低い」現象の代表例です。
統計データの出どころと信頼性
貯蓄に関する統計で代表的なのは、総務省が毎年実施している「家計調査報告(貯蓄・負債編)」です。この調査では全国から無作為抽出された数千世帯に対し、調査票を通じて収入や支出、貯蓄、借入金額などを報告してもらう形式で実施されています。
この方式は「聞き取り調査」ではなく、「自己申告制」による郵送またはオンライン入力が基本で、調査対象には一定の信頼性が求められます。しかし、誤差や偏りの可能性は否定できません。
どこまでが“貯蓄”としてカウントされるのか?
家計調査における「貯蓄」は、主に次のような項目が含まれます:
- 普通預金、定期預金
- 財形貯蓄
- 生命保険の解約返戻金
- 株式・投資信託などの金融商品
このように、単なる銀行口座残高だけでなく、広義の金融資産も含めたものが「貯蓄額」として集計されています。
したがって、人によって「これは貯蓄に入るのか?」という感覚に差があり、自己申告である以上、統計にもブレが生じる可能性があります。
実際の貯蓄状況は?公的データの見方
たとえば2024年の家計調査(貯蓄・負債編)では、二人以上世帯の平均貯蓄額は約1,600万円、中央値は約300万円とされています。高齢世帯ほど貯蓄額が多いため、全体の平均値が押し上げられている傾向があります。
一方で、20代~30代の若年層に限れば、平均でも300万~500万円程度で、中央値はもっと低くなります。つまり、平均値は年齢や属性によって大きく変わるため、必ずしも自分と同じ条件の人たちの代表値ではないことを理解する必要があります。
統計データをどう活用すべきか?
統計データをうのみにして一喜一憂するのではなく、「自分と同じような立場の人と比べてどうか」を見るための参考材料として使うのが賢明です。
また、平均より中央値を見るほうが、実態に近い生活感を反映しているといわれています。特に、資産形成や将来設計をする際には、中央値と年齢層別のデータを使うことで、より現実的な比較が可能になります。
まとめ:統計データはあくまで“目安”として活用を
貯蓄額に関する統計データは、調査方法に基づく一定の信頼性がありますが、自己申告制であることや、集計方法の性質上、実感とかけ離れることもあります。平均と中央値の意味を理解したうえで、自分と同じ属性のデータを参考にするのが賢い活用方法です。
あくまで「社会全体の傾向」をつかむためのツールとして利用し、自身の資産形成やライフプランに役立てましょう。
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