相続は人生の中でも複雑で繊細な手続きのひとつです。特に、相続登記と相続税申告の内容が異なる、いわゆる「不一致」が生じた場合、どうすべきか迷われる方は少なくありません。本記事では、登記名義を誤って分割してしまった場合や、実際の相続内容と登記が一致していない場合に考慮すべき点、そして修正方法について解説します。
相続登記と相続税申告はそれぞれ独立している
まず知っておきたいのは、相続登記（法務局への手続き）と相続税申告（税務署への手続き）は別制度であるという点です。登記内容がそのまま税務署に連動することはありませんが、申告内容と登記が著しく乖離していると、税務調査などのリスクが高まる可能性があります。
たとえば、実際には不動産を全て長男が相続したにもかかわらず、登記上では母と長男が共有名義になっていた場合、税務署は「母にも不動産の持分があった」と見なす可能性があるため注意が必要です。
登記内容と相続税申告内容が違うとどうなる？
登記簿と相続税申告の内容に食い違いがあると、税務署から質問や修正依頼が来ることがあります。特に、相続税の申告が必要なケースでは、財産の帰属が明確であることが求められるため、実際の財産の帰属と登記の整合性が取れていない場合には、説明責任が生じることになります。
誤解を防ぐためにも、税務署への相続税申告書には「実際には登記を誤って処理したが、相続財産の帰属はこうである」と注記を加えることで対応することも可能ですが、確実なのは登記の修正です。
誤った登記内容を修正するには「更正登記」が必要
一度完了した相続登記であっても、内容に誤りがあると気づいた場合は「更正登記（登記の修正）」を行うことが可能です。この手続きには以下のような流れがあります。
- 誤登記がなされた事実を証明する書類の用意
- 相続人全員の同意（遺産分割協議書の再作成が必要になることも）
- 法務局にて「更正登記申請書」を提出
たとえば、「父の相続財産を全て子が引き継いだつもりが、母と子の共有名義にしてしまった」というケースでは、「遺産分割協議書の誤記」として訂正協議書を作成することで、更正が認められる可能性があります。
更正登記を行わないリスクとは
登記内容が正しくないまま放置されると、将来的に売却や相続手続きが複雑化するリスクがあります。たとえば、母が亡くなった後に「母が持っていたはずの不動産持分」が別途相続の対象になることで、余計な相続手続きが発生する可能性があります。
また、税務署への説明においても整合性が取れず、申告内容の信頼性が疑われる要因となりかねません。可能な限り早めに訂正を行うことで、相続手続きの透明性と正確性を担保できます。
専門家への相談がスムーズな解決のカギ
登記の更正や相続税申告に関する書類の整合性確保には、司法書士や税理士の力を借りるのが安心です。特に、相続税申告が必要なケースでは、国税庁の公式情報や、地域の税理士相談窓口の活用も検討してみてください。
手続きの誤りを正しく修正することで、今後の相続トラブルや課税リスクを回避できる可能性が高まります。
まとめ：登記と申告内容は一致させるのが原則
相続税の申告が必要な場合、登記と実際の相続内容にズレがあると、不必要なトラブルや疑義を生む原因となります。今回のように、当初の登記で共有名義にしてしまったケースでも、更正登記を行えば修正は可能です。
将来の相続や不動産処分をスムーズに進めるためにも、登記内容と相続税申告内容はできる限り一致させておくことをおすすめします。少しでも不安がある場合は、専門家に早めに相談して対処しましょう。
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