退職後に国民年金保険料を免除申請できることは知っていても、「支払うべきだったのか?」「払わなかったほうが得だったのか?」という疑問に悩む方は少なくありません。特に、後に障害年金などを受給することになった場合、その判断が正しかったのか、再検討したくなるのは自然なことです。今回は、その答えを制度の仕組みと実例を交えて詳しく解説します。
国民年金保険料の免除制度とは
国民年金には、所得などに応じて保険料の全額または一部を免除できる制度があります。免除期間中も受給資格期間には算入されますが、将来の年金額には一定の影響があります。
たとえば、全額免除された期間は年金額に「2分の1」しか反映されません(※2025年時点)。つまり、納付した場合に比べて将来もらえる老齢年金が減ることになります。
障害年金の受給に影響はある?
障害年金の受給には、保険料納付要件という基準があり、原則として「直近1年間に未納がないこと」や「20歳からの納付期間のうち3分の2以上納付していること」などが求められます。
免除期間は「納付済期間」とみなされるため、障害年金の受給要件に影響はありません。したがって、免除申請をしていれば、未納ではない扱いとなり、受給資格を損ねることはないのです。
全額納付のメリットと損益ライン
退職後、任意で保険料を全額納付した場合、将来の老齢年金の金額が増えるのが主なメリットです。具体的には、36カ月(3年)分の保険料をすべて支払った場合、年間にしておよそ60,000円程度(目安)の年金額増加が見込まれます。
10年以上生存し老齢年金を受け取る場合、支払った保険料の元が取れる計算になります。一方、障害年金を早期に受給している場合は、老齢年金の受給が不要または遅れるため、支払った保険料の意味が薄れる場合もあります。
実例:退職後に全額納付→障害年金受給となったケース
実際に57歳で退職後、36カ月分の国民年金を全額納付し、その後60歳から障害厚生年金を受給した場合、老齢年金の受給は先送りされる可能性があります。
このようなケースでは、全額納付の恩恵を受けるには、将来の老齢年金を受けるタイミングが重要になります。60歳からの障害年金が一定額以上ある場合、老齢年金との調整も生じるため、支払った保険料がすぐに反映されるとは限りません。
税控除の観点では納付の意味はある
国民年金保険料を納付すると、その金額は全額が「社会保険料控除」として所得税や住民税の節税に使えます。たとえば年間20万円支払っていれば、所得税率が10%なら2万円の税還付効果が期待できます。
仮に将来的に老齢年金として受け取れなかったとしても、税金の軽減効果があるため、「損をした」とは一概に言えない側面もあります。
まとめ:ケースによって正解は異なる
国民年金保険料の納付が得か損かは、その後の人生設計や障害年金の受給状況、寿命、老齢年金の受給有無などに左右されます。免除制度をうまく活用しつつ、必要な保障が受けられるかを確認することが大切です。
納付が正解かどうかは「長生きして老齢年金をしっかり受け取る」「所得控除による節税効果がある」「障害年金と併用される可能性がある」など、多角的に判断すべきです。不安な場合は、年金事務所や社労士に相談し、個別事情に即したアドバイスをもらうとよいでしょう。
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