年収減少後の税・社会保険の控除はどうなる?役職定年や嘱託移行時の注意点

税金

年収が急激に下がるタイミング、特に役職定年や嘱託社員への転換期には、「税金や社会保険料は前年度収入を元に控除されるのか?」という疑問が生じます。初年度が苦しく感じる背景には、前年の高年収を基準とした課税・徴収が関係している場合もあります。

所得税は「前年の年収」に基づく課税ではない

所得税は、あくまで「その年の収入」に対して課税される仕組みです。源泉徴収として毎月控除される金額は、その月の給与額から計算されるため、収入が減れば所得税額も比例して減少します。

ただし、住民税とは異なる点に注意が必要です。所得税については、給与が下がれば即座に影響します。

住民税は「前年の年収」が基準になる

住民税は、前年の所得に基づき、翌年6月から課税されます。たとえば、2024年の住民税は2023年の所得に基づいて計算され、2024年6月から翌年5月にかけて納付します。

したがって、年収が半減しても、その翌年の住民税は前年の高所得を基準に課税されるため、収入が減った初年度は住民税負担が重くなります。

厚生年金や健康保険料は標準報酬月額が基準

社会保険料(厚生年金・健康保険)は「標準報酬月額」に基づいて決まります。この標準報酬月額は、通常4〜6月の給与を平均して決定され、9月からの1年間に適用されます(定時決定)。

つまり、4月以降に給与が減っても、反映されるのは9月以降となることが多いため、それまでは高い保険料が引き続き徴収されることになります。

例:年収1,000万円から500万円に減った場合の負担感

前年:年収1,000万円

  • 所得税:月ベースで徴収
  • 住民税:1,000万円ベース → 翌年に重くのしかかる
  • 社会保険料:高い標準報酬月額が維持 → 9月までは高負担

今年:年収500万円

  • 所得税:給与が減るため軽減
  • 住民税:前年基準で変わらず
  • 社会保険料:9月まで前年ベース → 9月からようやく軽減

結果として、実質的に可処分所得が大きく減るため、「非常に苦しい初年度」となるケースが多いのです。

苦しい初年度を乗り越えるための対策

1. 住民税の普通徴収への変更
住民税を給与天引き(特別徴収)ではなく、分割納付(普通徴収)に変えることで、一時的な支出を分散できます。

2. 標準報酬月額の随時改定申請(要件あり)
給与の著しい変動がある場合、一定の要件を満たせば「随時改定」で保険料を早めに見直せる場合もあります。会社の人事・労務部に相談しましょう。

3. 住民税の減免申請
地方自治体によっては、所得急減に対する住民税の減免措置を行っているところもあります。要件を満たすか確認してみてください。

まとめ:控除や税・保険料の基準を理解し備える

・所得税は当年収入に連動するが、住民税と社会保険料は前年や数か月前の収入に基づく

・年収が急減した初年度は住民税・保険料の負担が重くなる

・人事部門や自治体窓口への相談・申請で負担緩和の可能性あり

役職定年や嘱託社員への移行を迎える際には、収入と支出のタイミングのギャップを把握し、事前に備えることで精神的・経済的な負担を軽減できます。

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