介護保険の利用者負担割合は、所得に応じて1割・2割・3割のいずれかに決定されます。しかし、「昨年までは仕事をしていたが、病気で収入が減った」「年金だけで生活しているのに3割負担のまま」など、現在の経済状況と実際の負担割合が合っていないと感じる方も多いのではないでしょうか。今回は、収入が減った場合に介護保険の負担割合を見直すことができるのか、その条件と手続きについてわかりやすく解説します。
介護保険の負担割合の決まり方
介護保険の自己負担割合は、原則として前年の所得に基づいて判定されます。厚生労働省の指針では、以下のように区分されます。
- 1割負担:年金収入+その他の所得の合計が年間280万円未満(単身世帯の場合)
- 2割負担:一定以上の所得があるが、3割負担には満たない人
- 3割負担:現役並み所得者(年間収入が合計で340万円以上など)
つまり、現時点での収入ではなく「前年の所得」に基づいて決まるため、収入が急減してもすぐには反映されません。
収入が大幅に減ったときは「負担割合見直し申請」が可能
例外的に、収入が急激に減った場合や、生活状況が大きく変化した場合には、負担割合の見直し(再判定)を申請することができます。これを「特例申請」といい、市区町村に申し出ることで1割または2割負担への見直しが認められることがあります。
見直しが認められる主なケースは以下の通りです。
- 病気やけがにより就労が困難となり収入が激減した
- 退職や廃業などにより前年と比べて所得が著しく減った
- 災害や家計急変によって生活が困窮した
手続きの方法と必要な書類
負担割合の見直しを希望する場合は、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口で手続きを行います。必要書類の例は次のとおりです。
- 本人の収入状況がわかる書類(年金通知書、給与明細、確定申告書など)
- 医師の診断書や就労不能の証明書(病気が理由の場合)
- 介護保険負担割合証
- マイナンバーカードや身分証明書
申請から結果通知までには通常2週間~1ヶ月ほどかかります。認められた場合は、認定された月以降の介護サービスについて、負担割合が変更されます。
実際の事例:年収減で負担割合が変更されたケース
たとえば、昨年度まで自営業を営んでいた70代男性が、病気により廃業し、収入が年金月額10万円のみになったケースでは、前年の所得により3割負担となっていたものの、自治体へ申請し、医師の診断書と確定申告書を提出したことで、2割負担へと見直しが認められました。
また、単身高齢者で失業後に収入がほぼ年金のみとなった女性も、自治体の判断により、1割負担に変更された例があります。
見直しが難しいケースもあるため事前確認を
ただし、見直し申請がすべて通るわけではありません。以下のような場合は見直しが認められにくくなる可能性があります。
- 収入の減少が一時的と見なされる場合
- 家族からの援助があるなど、生活に支障がないと判断された場合
- 必要書類が不足している場合
不安な場合は、事前に市区町村の窓口へ相談し、申請条件を満たすかどうかを確認しておくことをおすすめします。
まとめ:負担割合の変更は「前年収入だけで決まらない」場合もある
介護保険の負担割合は原則として前年の所得で判定されますが、病気や失業による急激な収入減など、生活が著しく変化した場合には、市区町村に申し出ることで見直しが可能です。
負担の軽減を受けるためには、早めに状況を整理し、証明書類を揃えて相談することが第一歩です。不公平な負担を抱えたままにせず、必要に応じて制度を正しく活用しましょう。
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