大学進学にあたり奨学金を利用する学生は多く、卒業後の返済が大きな不安となることもあります。特に私立大学での高額な貸与額となると、その返済を親が行うか、自分で担うかの判断は非常に現実的な課題です。本記事では、世帯年収や新卒の初任給をもとに、奨学金の返済を親が支援できるのか、自分で返済可能かを具体的に分析し、現実的な選択肢を提示します。
親の世帯年収から見た返済可能性
世帯年収が900万円に届かないご家庭において、年間の家計負担を冷静に見ていく必要があります。例えば、親が55歳と仮定すると、今後の老後資金や住宅ローン、医療費などの支出が増えることが想定されます。
580万円の返済を10年で行う場合、単純に割っても年間58万円(毎月約4.8万円)の支出となります。収支に余裕がある場合は十分可能ですが、家族構成や他の教育費次第では慎重に検討すべき水準です。
特に奨学金は「本人が返すもの」という建前で貸与されており、親が代わりに返す義務はありません。そのため親の支援はあくまで「協力」であり、無理のない形で進める必要があります。
新卒初任給での生活費と返済の両立
初任給が33万円、勤務地が東京または関西圏という条件で、生活費をシミュレーションしてみましょう。
支出項目 | 月額(目安) |
---|---|
家賃 | 8万〜10万円 |
食費・光熱費 | 3〜5万円 |
通信費・保険等 | 1〜2万円 |
交際費・雑費 | 2〜3万円 |
奨学金返済 | 1〜2万円(任意額) |
上記から、毎月2〜3万円程度は奨学金返済に充てることが可能であり、ボーナスを併用すれば年30万〜40万円の貯金・返済も現実的です。
奨学金返済の仕組みと計画的な対策
第2種奨学金(有利子)は、卒業後半年以内に返済が始まるケースが一般的です。返済期間は15年〜20年に設定されており、月々の返済額は所得や利率に応じて決まります。
以下は日本学生支援機構が公表している返済シミュレーションの一例です。
- 借入額580万円
- 金利:年1.0%(固定)
- 返済期間:20年
- → 月々の返済額:約2万6,500円
この水準であれば、一人暮らしでも十分返済可能です。ただし、より負担を軽減したい場合は、以下の方法を検討しましょう。
- 繰上げ返済による利息軽減
- ボーナス月の増額返済
- 所得連動返還型の変更申請
親が負担する場合の合理的な分担案
親が全額返済するのではなく、子どもと分担することで現実的なバランスが取れます。たとえば。
- 親が月1万円支援(年間12万円)
- 本人が月1.5万円返済(年間18万円)
これなら年間30万円となり、20年で返済が完了します。途中で本人の収入が増えたり、親の負担が減れば繰上げ返済も可能になります。
また、親が住宅ローン完済などで余裕が出たタイミングで一部支援するという形も合理的です。
精神的な負担も意識しておく
奨学金返済は、経済的な問題だけでなく、精神的なプレッシャーにもつながります。しかし、返済計画をしっかり立てれば無理なく返していくことは可能です。
親に対して「将来的に支援するつもりがある」と伝えておくだけでも、お互いに安心できます。将来的に一括返済の資金を作るために、返済用の貯金口座を設けるのもおすすめです。
まとめ:親の支援も視野に入れた返済設計を
親の年齢や世帯年収を考慮すると、奨学金の全額を親が返すのは慎重に判断すべきですが、部分的な支援や分担なら十分現実的です。また、新卒で月33万円の収入があれば、一人暮らしをしながらでも奨学金返済は十分可能です。
感情的な「申し訳なさ」ではなく、数字をもとに現実的な計画を立てることが、長期的な安心につながります。
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