年金の繰り下げ受給や在職老齢年金の制度は複雑で、特に「支給停止」や「収入の扱い」がどのように影響するのか不安に思う方も多いのではないでしょうか。この記事では、65歳以降の繰り下げ受給を検討している方や、個人年金や働き方による年金支給への影響について詳しく解説し、これからの老後対策のヒントもあわせて紹介します。
在職老齢年金とは?支給停止の対象になる収入とは
在職老齢年金とは、65歳以上の方が「厚生年金に加入しながら給与等を得ている場合」、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止される制度です。
ポイントは、在職老齢年金の支給停止の対象となる収入は、あくまで“厚生年金に加入している会社からの給与や報酬”であり、それ以外の収入は含まれません。
したがって、個人年金の受取額や事業収入(個人事業主としての収入)、不動産収入などは、支給停止の対象にはなりません。在職老齢年金の計算式に含まれるのは、賃金や賞与といった「被用者収入」に限定されています。
繰り下げ受給中は在職老齢年金の支給停止対象外
65歳以降に老齢基礎年金・老齢厚生年金を「繰り下げ」している間は、そもそも年金を受給していない状態です。そのため、この期間にいくら収入があっても、在職老齢年金による支給停止という概念は発生しません。
たとえば、65歳から75歳まで個人年金のみで生活し、その間公的年金を繰り下げた場合、75歳からは繰り下げによる増額(最大184%)が適用された年金が支給されます。
つまり、繰り下げ期間中の収入の多寡は、将来の公的年金の支給額や支給停止には影響しません。ここは非常に重要なポイントです。
収入の種類と在職老齢年金の支給停止への影響
収入の種類ごとに、在職老齢年金の支給停止への影響を整理すると以下のようになります。
収入の種類 | 支給停止対象か |
---|---|
会社員の給与(厚生年金加入) | 対象 |
会社役員報酬(厚生年金加入) | 対象 |
個人事業収入 | 対象外 |
個人年金の受給 | 対象外 |
不動産所得・配当所得など | 対象外 |
したがって、収入形態を工夫することで、老齢厚生年金の支給停止を回避することも可能です。
特別支給の老齢厚生年金の終了と、1961年4月2日以降生まれの影響
1961年4月2日以降に生まれた男性(女性は1966年4月2日以降)は、「特別支給の老齢厚生年金」の対象外です。これにより、60歳から65歳までの年金受給がなくなり、老後資金に空白期間が生じることになります。
また、将来的に年金制度の見直しが行われる可能性もあり、加入期間の一部が国民年金扱いになるなど、年金額が思ったほど増えない可能性も指摘されています。
今からできる老後対策とは?
制度上の制約があるなかで、今からできる実践的な対策には以下のようなものがあります。
- 繰り下げ受給の活用:健康状態と貯蓄に余裕があるなら、繰り下げで年金額を最大84%増やす戦略は有効
- iDeCo・つみたてNISA:税制優遇を活かした老後資産の積立
- 生活コストの見直し:固定費の削減で老後の不安を減らす
- 働き方の工夫:厚生年金加入を避ける働き方により年金停止を回避
特に個人年金や副収入を使いながら、65〜75歳までを「無年金期間」とせず乗り越えることが大切です。
まとめ:繰り下げ中は収入に制限なし、収入の形も戦略に
公的年金の繰り下げ受給は、在職老齢年金の支給停止制度とは切り離されており、その間に得る個人年金や副業収入は問題になりません。収入の形によって将来の年金受給額や支給停止リスクも変わるため、「どんな収入か」を意識した戦略的な働き方・受け取り方が重要です。
制度の変更や年金額の減少が見込まれる中でも、できる準備を早めに進めておくことで、将来への不安を和らげることができます。まずは年金事務所や専門家に相談し、自分に合った老後設計を始めてみましょう。
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