生活保護を受けている方の中には、以前から民間の医療保険に加入していたというケースも少なくありません。では、生活保護を受けている間でも、医療保険から給付金を受け取ることは可能なのでしょうか?また、受け取った場合に返還や報告義務はあるのか、先進医療への対応はどうなるのか――この記事では、実際の制度運用や法律に基づいた解説を交え、詳しく紹介していきます。
生活保護と医療保険は両立できるのか?
生活保護を受けていても、民間の医療保険に加入していること自体は禁止されていません。むしろ、加入している場合は、保険会社から給付を受けることができる可能性もあります。
ただし、医療扶助(生活保護における医療費負担)が適用されている間に保険金を受け取った場合、その給付は収入認定されることがあり、保護費の減額や返還の対象になることもあるため、注意が必要です。
医療保険の給付金を受け取ることは可能?
原則として、加入していた医療保険の契約内容に基づき、入院・手術などの条件を満たしていれば給付金の受け取りは可能です。ただし、実際に請求を行う場合は、生活保護担当ケースワーカーへの申告が必要です。
例えば、「がん保険に加入していた生活保護受給者が入院給付金を申請し、10万円を受け取った」といったケースでは、その10万円が収入として扱われ、翌月の生活扶助費が減額される可能性があります。
先進医療の費用と保険請求の可否
生活保護制度では、健康保険適用外の医療(=自由診療)は原則カバーされません。そのため、先進医療にかかる費用は全額自己負担となります。ただし、該当する医療保険に「先進医療特約」が付いていれば、給付を受けることは可能です。
たとえば、重粒子線治療や陽子線治療など、先進医療の対象となる治療に対し、民間保険から数百万円の給付を受けた事例もあります。ただし、この場合も収入として認定されることがありますので、事前に自治体の福祉事務所に相談することが重要です。
給付金を受け取った場合は申告が必要
生活保護の規定では、すべての収入(保険金含む)は申告義務があります。これを怠ると、不正受給とみなされ、後日返還命令や処分の対象になる可能性も。
したがって、医療保険からの給付金を受け取った場合は、速やかにケースワーカーに報告し、どう扱われるかを確認しましょう。
保険契約そのものの取り扱いと注意点
生活保護を申請する際には、保険契約を「資産」とみなすかどうかも判断されます。たとえば、解約返戻金付きの終身保険に加入している場合、解約して生活費に充てるよう指導されることもあります。
一方、掛け捨て型の医療保険や収入保障保険であれば、そのまま継続可能なケースが多いです。加入している保険の種類と契約内容に応じた取り扱いがされるため、契約書類を準備して相談することをおすすめします。
まとめ:医療保険の請求は可能だが申告と理解が必要
生活保護を受けながらでも医療保険の給付を受け取ることは可能ですが、その金額が収入として扱われ、結果的に生活扶助費の減額や返還が求められるケースもあります。
ポイントは「事前の相談」と「正確な申告」です。トラブルを避けるためにも、保険金の請求前に福祉事務所へ相談し、制度の枠内で安心して治療や給付を受けられるよう準備を進めましょう。
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