個人事業から法人化を検討している方にとって、「社会保険料の負担」は大きな関心事です。とくに一人法人(代表取締役1人のみ)では、役員報酬の設定次第で社会保険料を大きく左右できます。本記事では、社会保険料を最小に抑えるための考え方や実際の金額イメージ、注意点まで詳しく解説します。
社会保険料の仕組みを簡単に理解する
法人にすると原則として、役員(1人でも)には社会保険の加入義務が生じます。対象は健康保険と厚生年金保険で、保険料は役員報酬を基準に算出されます。
保険料は報酬月額に応じて「等級」が決まり、各等級ごとに定額の保険料が設定されています。たとえば、報酬が月88,000円なら「第1等級」となり、それが最安クラスの社会保険料となります。
実際いくら?最安水準の保険料シミュレーション
最も安く社会保険料を抑えるには、役員報酬を月88,000円に設定するのが目安です(2025年時点の全国健康保険協会・協会けんぽ基準)。
社会保険料(月額)の目安(東京都・協会けんぽ)
- 健康保険:約6,000円(本人負担)
- 厚生年金:約8,000円(本人負担)
- 合計:約14,000円/月、年間約168,000円
会社負担分も同額なので、実際には会社と本人で約28,000円/月のコストがかかります。
なぜ役員報酬88,000円がカギになるのか?
協会けんぽの保険料は報酬の「等級」によって決まり、88,000円未満だと社会保険への加入そのものが難しくなる場合があります(報酬なしか現物支給扱いとされる)。
そのため、社会保険加入義務をクリアしつつ、最も低い保険料負担で済む“ギリギリのライン”が88,000円なのです。
安く抑える際の注意点
社会保険料を抑えすぎると、将来受け取れる厚生年金が少なくなります。年金額は生涯の報酬額に比例して計算されるため、あまりに低報酬を続けると老後の年金も大幅に減額されます。
また、役員報酬の変更は年1回が原則で、年度中に調整するのは原則不可なので注意が必要です。
報酬をゼロにしたらどうなる?
「そもそも役員報酬をゼロにすれば社会保険料ゼロでいいのでは?」と考える方もいますが、これはリスクが伴います。
税務上、業務実態があれば“実質的な報酬あり”と判断され、過去にさかのぼって保険料の徴収対象となることもあります。適切な額の報酬設定が必要です。
まとめ:社会保険料を最小にするには戦略的な設定が必要
・一人法人でも社会保険の加入義務は原則あり
・最安に抑えるなら報酬88,000円が基準(月額約14,000円の本人負担)
・保険料を抑える代わりに将来の年金額は少なくなる
・報酬ゼロは原則不可、税務・保険上のトラブルになる可能性も
節税や資金繰りを考慮しつつ、老後資金とのバランスも見据えた報酬設計が重要です。社会保険料の最適化には、税理士や社労士との相談もおすすめします。
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