年金制度において、「国民年金の支払いは60歳まで」と聞いたことがある方も多いでしょう。しかし、受給開始年齢が65歳であることを踏まえると、「その間の5年間は支払いもなく、もらうこともできないの?」という疑問が出てきます。この記事では、60歳〜65歳の間の制度の仕組みや、任意加入、繰下げ受給との関係を詳しく解説し、損をしないための選択肢をご紹介します。
原則:国民年金の保険料は60歳までで終了
日本の国民年金制度では、保険料の納付義務は20歳から60歳までと定められています。つまり、基本的には60歳の誕生月をもって納付義務は終了し、それ以降は強制的に支払う必要はありません。
この制度の下で、老齢基礎年金は原則として65歳から支給開始されます。つまり、60歳〜65歳の5年間は「保険料を支払わず、年金もまだ受け取れない」という空白期間が存在します。
60歳以降に「任意加入」できるケースとは?
この空白期間を埋める制度として、「任意加入制度」が用意されています。以下のような人が対象になります。
- 60歳時点で保険料納付済期間が480月(40年)に満たない人
- 年金の受給額を増やしたい人(満額に近づけたい)
たとえば、納付期間が470月しかない場合、任意加入で残り10ヶ月支払うことで、将来受け取る年金額を増やすことが可能です。この任意加入は、65歳まで可能ですが、条件によっては65歳以降の加入(70歳まで)も認められることがあります(ただし、受給資格の取得が目的の場合に限られます)。
年金は65歳から受給開始が基本
老齢基礎年金の受給開始年齢は原則として65歳ですが、60歳〜70歳の間で「繰上げ」または「繰下げ」が可能です。
- 繰上げ受給(60〜64歳):早くもらえるが年金額は最大30%程度減額される
- 繰下げ受給(66〜75歳):開始年齢に応じて最大42%程度増額される
支払い義務が終わったからといって自動的に受給が始まるわけではないため、65歳で年金を受け取るには自身で請求手続きを行う必要があります。
60歳以降の保険料支払いがない期間は無意味なのか?
60歳以降に保険料を支払わなくても、それまでの納付状況によって将来の年金額は決まります。満額(480月)の納付を達成していれば、それ以上支払う必要はありません。
たとえば、40年間きっちり納付していた人であれば、65歳から年額約80万円(2025年度基準)の老齢基礎年金が支給されます。一方で、未納や免除期間が多く、納付期間が短い人は、任意加入で年金額を増やす選択肢があるということです。
実例:65歳受給で60歳以降何もしなくてよいケース
例1:60歳までに納付済み月数が480月=満額達成 → 任意加入の必要なし → 65歳から受給可
例2:納付済み月数が440月(残り40月) → 60歳から任意加入で最大5年間納付 → 満額に近づける
例3:納付済み月数が300月以下で受給資格なし → 65歳以降も任意加入(70歳まで)可能 → 受給資格獲得を目指す
まとめ:60歳で支払いは終了、65歳までの期間は戦略的に
国民年金の保険料支払いは原則60歳までで終了しますが、65歳から年金を受け取るには、それまでの納付実績が重要です。60歳以降は義務ではないものの、任意加入で将来の年金額を増やすことも可能です。
自分が何ヶ月納付済みか、年金定期便などで確認し、必要に応じて任意加入や繰下げ受給などを検討することが、損をしない年金戦略の第一歩となります。
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