早期退職と確定拠出年金の退職所得控除の適用ルール|受け取り時期のズラし方で税負担はどう変わる?

年金

早期退職や確定拠出年金の受け取りを検討する際、多くの方が気になるのが「退職金にかかる税金」。特に受け取り時期をズラすことで税負担を抑えられるかどうかは、退職直前の重要な検討ポイントです。この記事では、退職所得控除や課税の仕組み、受け取りタイミングの影響について、実例を交えてわかりやすく解説します。

退職金にかかる税金の基本|退職所得控除とは?

退職金は「退職所得」として扱われ、所得税や住民税の対象となります。ただし「退職所得控除」という優遇制度があり、長年勤務した人ほど控除額が大きくなる仕組みです。

退職所得控除の計算式:
・勤続年数が20年以下:40万円×勤続年数(最低80万円)
・勤続年数が20年超:800万円+70万円×(勤続年数−20年)

この控除額を超えた部分についても、課税されるのはさらにその1/2の金額だけ。つまり、通常の給与所得より大幅に税負担が軽くなります。

確定拠出年金(iDeCo含む)の一時金受け取りも「退職所得」扱い

企業型・個人型にかかわらず、確定拠出年金を一時金で受け取った場合も「退職所得」扱いになります。そのため、早期退職での退職金と合わせて課税対象になる可能性があります。

ただし、退職所得控除は一生に一度しか使えないというわけではなく、一定の条件を満たせば、退職金と確定拠出年金でそれぞれに控除を適用することができます。

ポイントは「退職理由」と「受け取りのタイミング」

税法上、退職所得控除は以下のように整理されます。

  • 同じ会社で複数回に分けて退職金や確定拠出年金を受け取った場合
    退職金とDC一時金の退職理由が同じで、かつ受け取りが近いと、合算して一度の退職所得とみなされます。
  • 受け取りの間に「5年以上」の間隔があれば、別々の退職所得として控除が適用可能
    これが俗にいう「5年ルール」です。

つまり、今回のように58歳で早期退職し、60歳で確定拠出年金を受け取る場合、条件を満たせば別々の控除が可能です。

実例:受け取り時期の違いでどう課税額が変わるか

たとえば、勤続年数が30年の方が次のように受け取る場合。

  • 早期退職金:2,000万円(58歳時点)
  • 確定拠出年金:1,000万円(60歳時点)

【パターン①:同一年で受け取る場合】
・退職所得控除は1回分(30年勤続=1,500万円)
・課税対象額=(2,000+1,000−1,500)÷2=750万円
→この750万円に課税

【パターン②:退職金とDCを5年以上空けて受け取る場合】
・それぞれに退職所得控除が適用
・退職金:2,000−1,500=500÷2=250万円
・DC:1,000−1,500(全額控除対象)→課税ゼロ
→トータル課税対象額250万円のみ

このように、受け取り時期を調整するだけで税金が大きく異なる場合があります。

注意点:制度の変更や個別条件の影響も

税制は変更されることがあります。また、勤務先の退職金規定、企業型DCの取り扱い、退職理由の明記方法などによっても課税の判断が分かれます。特に企業型DCを60歳より前に受け取れるかどうかは制度次第なので、事前に確認が必要です。

また、「5年以上空けたつもりでも、実際は認められなかった」というケースもあります。年金資産の受け取りには、証明書類の記載内容や提出時期も影響するため、早めに税理士やファイナンシャルプランナーに相談しましょう。

まとめ|受け取りタイミングを戦略的に決めて節税を

・早期退職金と確定拠出年金は、どちらも退職所得控除の対象になる

・5年以上の間隔を空けて受け取ると、それぞれに控除が使える可能性がある

・控除の有無で数十万円〜百万円以上の税金差が生まれることも

自分の退職金制度や確定拠出年金の規約、税法上の扱いを丁寧に把握し、必要であれば専門家と一緒に受け取りスケジュールを戦略的に設計することをおすすめします。

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