保険契約では、原則として「受取人」を契約時に指定しますが、多くの保険会社では第三者(非親族)を受取人とすることに制限があります。では、親族以外に死亡保険金を渡したい場合、どう対応すればよいのでしょうか?この記事では合法的な代替手段や実務上の注意点を解説します。
保険会社が親族以外を受取人にできない理由
保険契約では、「保険金殺人」などの犯罪防止の観点から、血縁・婚姻・生計を一にする関係に限定して受取人を認めている場合が多くあります。
保険会社によっては、友人・交際相手・事実婚相手などは「受取人としての認定が不可」とされているケースもあるため、あらかじめ契約時の規定を確認する必要があります。
知人に死亡保険金を渡したい場合の3つの代替方法
受取人に指定できない場合でも、以下のような方法で間接的に渡すことは可能です。
① 遺言書による遺贈(遺言執行者の指定)
自筆証書遺言や公正証書遺言を作成し、「死亡保険金を受け取った親族がその一部または全額を知人に遺贈する」旨を明記します。
ただし保険金は通常、受取人固有の財産として相続財産には含まれないため、遺言書で指示できるのは原則として間接的な譲渡に限られます。
② 受取人からの贈与契約(生前契約)
保険金受取人とその知人との間で、「保険金を受け取ったらその全額または一部を渡す」旨の契約書を交わす方法です。
これは形式上の贈与となるため、年間110万円を超える金額には贈与税がかかる点に注意が必要です。
③ 死亡後に現金を遺贈する形式に切り替える
死亡保険金はそのまま親族が受け取り、別途現金300万円を遺贈財産として指定することで、保険とは切り離して知人に渡す形をとることも可能です。
この場合も遺言書が必要で、知人が受け取る金額は「相続税の課税対象」として10〜50%の税率がかかる点に注意が必要です。
事前にやるべき準備と注意点
- 保険契約の内容を再確認し、受取人変更が可能か問い合わせる
- 知人への遺贈意志がある場合、公正証書遺言の作成を強く推奨
- 親族との間でトラブルを避けるため、信頼できる遺言執行者の指名も重要
- 弁護士や行政書士に相談し、法的に矛盾のない形で文書を整える
なお、「保険金受取人に指定されていない者が保険金請求をすることはできません」という法的ルールを前提としたプランニングが必要です。
実例:親族受取人から知人への贈与で300万円を譲渡
保険契約上は母親が受取人、保険金額300万円。死亡後、母親がその全額を知人Aに渡す契約書を生前に作成しておく。
この場合、知人Aには贈与税が発生するが、契約書が明確であれば合法的な手段となります。
まとめ
保険契約で親族以外を受取人にできない場合でも、遺言書の作成や贈与契約によって、死亡保険金を知人へ渡す道は残されています。
ただし、税金や法的効力の面で複雑な点が多いため、事前に専門家に相談し、書面でしっかり残すことが重要です。
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