日本の公的年金制度の中で、専業主婦が対象となる「第3号被保険者制度」は長らく存在してきました。しかし、少子高齢化と制度の公平性への議論から「第3号制度の廃止」について検討が進められています。もしこの制度が廃止された場合、どのような影響があるのでしょうか?夫婦の家計、特に専業主婦世帯にはどんな変化が生まれるのか、制度の背景から最新の動きまで詳しく解説します。
第3号被保険者とは何か?
日本の年金制度では、被保険者が3種類に分かれています。第3号被保険者とは、「厚生年金に加入している会社員や公務員の配偶者で、年収130万円未満の専業主婦(夫)」などが対象です。自分で保険料を支払わずとも、保険料は配偶者の厚生年金から間接的に賄われ、老後に基礎年金を受け取れる仕組みです。
この制度は、1986年の制度改革で導入されましたが、現在では共働き世帯の増加により不公平だとの声も強まっています。
なぜ第3号制度の廃止が議論されているのか?
第3号制度は、働かずに年金保険料を払わずして将来の年金を受け取れるという点で、他の被保険者と比べて優遇されすぎているという批判があります。
特に、パートで年収130万円未満に抑える“年収の壁”問題を引き起こす要因とも言われ、労働力の活用や女性のキャリア形成を妨げているとされます。また、制度維持にかかる負担が現役世代に重くのしかかっているという財政面の懸念もあります。
制度が廃止されたらどうなる?
仮に第3号制度が廃止された場合、対象者である専業主婦(または主夫)は「第1号被保険者」として、自ら年金保険料を支払う必要が出てきます。
2025年度現在の国民年金保険料は月額16,980円(年額約20万円)で、これを世帯で負担することになります。結果的に、家計を支える配偶者(多くの場合は夫)にとって、新たな支出となる可能性があります。
専業主婦世帯にとっての影響と対応策
制度が変わった場合、夫がその分の保険料を負担するのか、または妻がパートなどで自ら稼いで支払うのかを世帯ごとに考える必要があります。
たとえば、夫の年収が600万円で、妻が専業主婦だった場合、年額約20万円の追加支出は無視できない影響です。パート勤務を増やすか、扶養内で働く条件を見直す必要があるかもしれません。
現時点での制度動向と政府の対応
2024年以降、政府は制度見直しの議論を本格化させていますが、すぐに廃止されるわけではなく、段階的な移行措置や負担軽減策の検討もなされています。たとえば、保険料の免除制度や所得に応じた軽減措置が導入される可能性もあるため、過度な不安を持つ必要はありません。
一方で、「夫から妻の分の保険料を徴収する形になるのか?」という疑問については、間接的には家計からの支出になるため、結果的には「そうなる」可能性が高いと言えます。
まとめ:将来の備えとして今から考えておくべきこと
第3号被保険者制度の廃止は、まだ確定したわけではありませんが、専業主婦世帯にとって現実的な選択肢の一つとして準備しておくことが大切です。
- 家計における年金保険料の負担増をシミュレーションする
- 妻が働く選択肢を検討する
- 将来の年金額を試算してライフプランを見直す
など、家庭内での話し合いを始めておくことが賢明です。今後の制度変更に柔軟に対応できるよう、情報収集と早めの準備をおすすめします。
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