「たった30万円の売上増で、国民健康保険料が4,000円も上がるなんて…」そんな疑問を持つ個人事業主の方は少なくありません。収入と保険料の増減の関係が複雑なため、制度上の仕組みを理解していないと「計算ミスでは?」と感じるのも無理はないでしょう。この記事では、国民健康保険料がどのように決定されているのか、そして収入増による影響の実態について丁寧に解説します。
国民健康保険料の計算方法の基本
国民健康保険料は、市区町村ごとに決められるルールに基づいて計算されますが、基本的には以下の3つの要素から構成されています。
- 所得割:前年の所得に応じて計算される部分
- 均等割:世帯の加入者数に応じて一律に課される部分
- 平等割:世帯単位で定額に課される部分(地域により廃止されている場合もあり)
特に個人事業主の場合は、確定申告に基づく「事業所得(売上−経費)」をベースに所得割が決定されるため、わずかな売上増でも課税所得が増えると保険料に反映されやすくなります。
30万円の売上増が4,000円の保険料増になる仕組み
一見すると「30万円増えたくらいで?」と思われるかもしれませんが、実際には以下のような計算が背景にあります。たとえば、所得割の料率が「8%」である自治体の場合、30万円 × 8% = 24,000円もの増額要因になります。
ただし、これはあくまで「課税所得」が30万円増えた場合の話であり、経費によって所得額が抑えられている場合には、この限りではありません。また、多くの自治体では国保料に上限があるため、一定額以上は加算されません。
想定より高くなる原因として考えられる要素
保険料が想定より高くなる背景には、以下のような要因も関係しています。
- 前年の所得が「控除対象外」の項目として大きくなった
- 住民税の非課税枠から外れたことによる割増し
- 扶養家族の有無や人数の変動
- 自治体独自の制度改定(均等割の引き上げなど)
実際には、保険料の通知に添付されている内訳を確認し、どの部分が増額されたのかを冷静に見極めることが重要です。
見直すべきは「所得」ではなく「所得控除」
事業所得の増減よりも、所得控除の見直しが保険料に大きく影響するケースがあります。たとえば、青色申告特別控除や小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除などを活用することで、実質的な「所得」を圧縮し、保険料の増加を抑えることができます。
適切な節税対策=保険料対策でもあるという視点を持つことが、長期的には重要になります。
実例:年収30万円増で保険料がどれだけ変わる?
東京都内のある区では、所得割率が約7.8%。この場合、30万円の所得増によって保険料が約23,400円増える計算です。月額に換算するとおよそ1,950円の上昇。年額で4,000円の増額は、実際にあり得る範囲と言えるでしょう。
一方で、経費を3万円上乗せしたことで保険料の増額が抑えられたケースもあります。わずかな工夫で負担を軽減できる可能性があります。
まとめ:少額の収入増でも保険料が上がるのは「普通にあり得る」
国民健康保険料の仕組み上、たとえ数十万円の収入増でも、課税所得が増えれば保険料は比例して上がる可能性があります。これは「計算ミス」ではなく、制度上の仕様と言えるのです。
まずは市区町村から届く保険料通知の内訳を確認し、疑問があれば市役所の国保担当窓口に照会しましょう。また、所得控除や節税対策を見直すことで、翌年以降の保険料負担を軽減できる可能性もあります。
知らないうちに損をしないためにも、「制度を知って備える」ことが、個人事業主にとって重要な知識です。
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