職場で働いているのに、契約書もない、保険も入っていない、口頭だけで始まった仕事…。そんな状況に不安や不信感を抱く方は少なくありません。この記事では、正式な雇用手続きがされていないまま働いてしまった場合に、どのようなリスクがあるのか、そしてどう対処すべきかを労働法の観点からわかりやすく解説します。
契約書がなくても「労働契約」は成立する
労働契約は、書面でなくても、口頭での合意や実際に働いた事実があれば成立します。つまり、「業務を依頼された」「仕事を始めた」「指示を受けた」などの状況があれば、法的には雇用関係が成立したとみなされます。
実際に勤務を開始している場合、契約書の有無に関係なく、会社は労働者に対して給与支払義務や社会保険手続きの義務を負います。
無保険・無契約のまま働くリスク
労働契約の形式が整っていない場合、以下のようなトラブルが生じやすくなります。
- 社会保険・雇用保険への未加入
- 給与の未払い、支払い遅延
- 突然の解雇や労災時の保障が受けられない
特に社会保険に未加入のまま働くと、けがや病気で働けなくなった場合に公的支援を受けられなくなるなど、生活に直結するリスクがあります。
「今すぐ辞めたい」は可能?契約がない場合の退職
書面契約がなくとも、働いた事実がある限り雇用関係が成立しているため、「労働者からの退職」はいつでも可能です。原則として退職の申し出から14日で契約終了とされますが、未締結の状態での退職であれば即日退職も問題ないケースがほとんどです。
とはいえ、突然辞めることでトラブルにならないよう、口頭だけでなくメールなど文書で「退職の意思表示」を残すことをおすすめします。
給料はもらえる?「ただ働き」は違法
労働基準法では、労働の対価としての賃金は必ず支払わなければならないと定められています。契約書がなくても、業務内容・勤務日・勤務時間の記録や証拠(メール・LINE・写真・勤務表など)があれば、後からでも賃金請求は可能です。
仮に支払いを拒まれた場合でも、労働基準監督署や法テラスに相談することで対応が取られます。労働問題は証拠がカギとなるため、今のうちにできるだけ記録を残しておくことが重要です。
相談窓口と取るべき行動
このようなトラブルに遭遇したら、以下の相談先を活用するのが有効です。
- 労働条件相談ほっとライン(厚生労働省:無料・匿名相談可)
- 各地の労働基準監督署(給与未払い・社会保険未加入など対応)
- 法テラス(法的手続きの相談・無料弁護士紹介)
また、今後のために「採用時には契約書を交わす」「社会保険加入の確認をする」といったチェックリストを持っておくことも予防につながります。
まとめ:契約がなくても労働者の権利は守られる
書面での契約がなかったとしても、勤務実態がある限り、会社には法的な義務が発生します。無保険・無契約で働いている状態は労働法上の問題であり、速やかに辞める権利も、賃金を請求する権利も、あなたにあります。
不安や不満がある場合は、一人で抱え込まず、労働相談窓口などに相談しながら早めに対処しましょう。
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