祖母から孫への土地贈与はどの方法が最適?相続・贈与・養子縁組の税制比較と実務ポイント

税金

祖父母から孫への財産移転、とくに土地の贈与や相続については、税制・法務の両面で慎重な判断が求められます。贈与税、相続税、不動産取得税などの違いや、将来の家族構成まで踏まえて検討する必要があります。本記事では、祖母から孫への土地移転を検討する際の主な選択肢とそのメリット・デメリットを具体的に解説します。

今回のケースにおける基本的な状況整理

まずは登場人物と資産の概要を確認します。

  • 祖母(90代):施設入所中、資産総額約2,500万円(自宅土地1,000万円+現金1,500万円)
  • 相続人:長女(相談者の姉)と長男(相談者)
  • 長女の子(甥・30代):祖母の孫であり、実家を譲り受け建替え予定

財産の配分として、甥に土地1,000万円を遺すことを希望し、相談者は現金1,250万円、姉は現金250万円という形で了承済みです。

選択肢①:生前贈与と相続時精算課税制度の活用

祖母から孫への生前贈与は原則として暦年贈与(110万円基礎控除)または相続時精算課税制度が選べます。

孫は直系卑属(子の子)ですが、直系子孫ではないため、相続時精算課税の適用には祖母の子(姉)が贈与者となる必要があります。

したがって、今回のように「祖母から直接孫へ土地を生前贈与」する場合、基本的に暦年贈与となり、1,000万円の贈与にはかなりの税負担(贈与税)+登録免許税3%、不動産取得税などがかかるためあまり得策とは言えません

選択肢②:遺言書による遺贈(死亡後に甥へ土地を相続)

もっとも実務的でコストを抑えられる方法が遺言書の作成による遺贈です。公正証書遺言で「○○(甥)に自宅土地を遺贈する」と明記し、その他は姉・弟で按分すれば、相続税の基礎控除(3,000万円+法定相続人×600万円)も十分に活かせます。

今回の総資産は2,500万円なので、基礎控除(4,200万円)内に収まり、相続税はゼロ円となる見込みです。

遺贈の場合も、甥は法定相続人ではないため、相続税がかかる場合は2割加算となりますが、税額ゼロなら加算の影響もありません。

選択肢③:甥を祖母の養子にする

養子縁組により、甥を法定相続人(孫→子)に格上げすることで、以下のメリットがあります。

  • 相続税2割加算の回避
  • 相続人が3人となり、基礎控除が4,800万円に拡大

ただし、養子縁組は法律行為であり、祖母本人の意思確認が必要です。認知症などがある場合は成年後見制度の活用が前提となるため、実行ハードルが高い方法でもあります。

不動産取得時にかかる税金にも注意

生前贈与または遺贈の場合、土地の取得には以下の税金が発生します。

  • 登録免許税:相続時=0.4%、贈与時=2.0%(遺贈時も原則2.0%)
  • 不動産取得税:相続=非課税、贈与・遺贈=課税(ただし軽減措置あり)

つまり、相続(遺贈)による取得がもっとも税負担が少ないという結論になります。

実務上のおすすめプラン

今回のご家庭の合意内容と税制を踏まえると、次のような手順が現実的です。

  1. 祖母の意思が明確なうちに「公正証書遺言」を作成し、甥に土地を遺贈する旨を明記
  2. 姉と弟で遺産分割協議書を作成し、配分比率を調整(弟:現金1250万、姉:現金250万+息子への遺贈了承)
  3. 相続発生後は相続税の申告・納付不要(基礎控除以下)

この方法であれば、贈与税・相続税・登録免許税・不動産取得税すべて最小限に抑えられます。

まとめ:相続による遺贈+遺言書活用が最も合理的

祖母から孫への土地移転は、生前贈与よりも「遺言による遺贈」が税務・実務ともに有利です。養子縁組は有効ですが、本人の意思確認や家庭裁判所の手続きが必要になるため、ハードルが高い点に注意が必要です。

遺言の活用により、全員の同意を尊重しつつ、税負担ゼロで意向通りの資産承継が可能です。早めに公正証書遺言の作成を検討し、専門家(税理士や司法書士)にも相談して具体的な書類を整備しておくと安心です。

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