「年金の総支給額が180万円だったけど、これは合計所得額として扱っていいの?」と悩む方は多くいらっしゃいます。実は、年金の総支給額と税金や各種制度で使われる「合計所得額」は一致しないケースが一般的です。この記事では、その違いと正しい所得額の考え方、税制・控除との関係についてわかりやすく解説します。
年金の総支給額と合計所得額の違い
年金の「総支給額」とは、1年間に受け取った年金の合計金額(源泉徴収票の「支払金額」)を指します。一方、「合計所得額」は、そこから必要経費や各種控除を引いた金額です。
年金所得においては、まず「公的年金等控除」が差し引かれた残りが「所得」として扱われます。したがって、180万円の総支給額があっても、実際の所得はそれより少ないことが一般的です。
公的年金等控除とは?
公的年金等控除とは、年金受給者に対して所得税や住民税を軽減する目的で設けられている控除制度です。年金の総額に応じて、以下のように自動的に一定額が控除されます。
年金収入額(65歳以上) | 公的年金等控除額 |
---|---|
130万円以下 | 年金収入の全額 |
130万円超〜410万円以下 | 収入金額 × 25% + 37.5万円 |
410万円超 | 段階的に控除額が変動 |
たとえば、65歳以上で180万円の年金収入がある場合、公的年金等控除額は約60万円となり、課税上の「年金所得」はおおよそ120万円になります。
所得控除と課税所得の関係
年金収入が180万円であっても、そこから「公的年金等控除」に加えて、「基礎控除(48万円)」や「配偶者控除」「医療費控除」などを差し引くことで、最終的な課税所得はさらに減少します。
例えば、180万円の年金収入で控除後の年金所得が120万円、さらに基礎控除48万円を差し引けば、課税所得は72万円となります。このように、総支給額と実際の課税対象となる所得は大きく異なるのです。
住民税の非課税ラインに関する誤解
住民税や医療費負担、介護保険料の軽減措置などに影響する「合計所得金額」には、上記のような所得控除を加味した金額が用いられます。
住民税非課税世帯の判定には「年金収入が158万円以下(65歳以上単身者の場合)」などの目安がありますが、この158万円は課税所得ではなく収入ベースで見られます。しかし実際の判定では所得控除後の金額も関わるため、年金180万円でも非課税になる可能性はあります。
年金と合計所得額が一致するケースはある?
例外的に「年金収入が少なく、控除が適用されない」場合や「年金以外に所得がない人」であれば、年金の支給額と合計所得額がほぼ一致するケースもあります。ただしそれはごく一部の例です。
通常は、年金所得=年金支給額 − 公的年金等控除 という構造になっているため、年金支給額=合計所得額 ではないと理解しておくのが正確です。
まとめ
・年金の「総支給額」と「合計所得額」は異なる概念
・公的年金等控除により課税対象の所得は少なくなる
・住民税や所得税は控除後の「課税所得」で決まる
・年金額180万円でも、合計所得額は控除によって減るのが一般的
税金や社会保障制度において重要なのは、年金の「受け取った金額」そのものではなく、「控除後の所得金額」です。正確な理解で制度の不安を解消しましょう。
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