令和5年厚生年金法択一式問7Dでは「受給権は消滅しない」とありますが、これは年金制度の理解において非常に重要なポイントです。本記事では、その理由と法的根拠を明確にし、事後重症との違いや併給の可否について具体例を交えて丁寧に解説します。
① なぜ「受給権は消滅しない」のか?
厚生年金法では年金請求権には時効制度があり、通常は基本権・支分権ともに5年で消滅時効の対象となりますが、請求前に「時効援用しない申立」があれば基本権(=受給権)自体は消滅しません。実際、日本年金機構もこの扱いを採用しています。:contentReference[oaicite:0]{index=0}
つまり、「受給権は消滅しない」と記述されているのは、請求しなかったとしても受給そのものの権利が完全消滅するわけではないということです。
② 事後重症との違いとは?
事後重症とは、障害認定日に等級に至らなかったが、後日症状が悪化し等級に該当した場合に請求できる制度です。ここでは請求があった日から初めて受給権が発生し、請求翌月から支給が始まります。:contentReference[oaicite:1]{index=1}
一方、「受給権が消滅しない」という記述は、障害認定日請求や遡及請求の基本権の消滅阻止の話であり、事後重症とは別の論点です。
③ 受給権が消滅しなければ“併給できる”のか?
併給は、例えば障害厚生年金と遺族厚生年金、または障害厚生と障害基礎など、複数の制度間での同時受給の問題です。これは受給権の有無とは別の調整ルールによって判断されます。
併合認定制度などにより併給額が決まりますが、「受給権が消滅しない=自動的に併給可能」ではありません。併給可能かどうかは別制度(併合認定など)によって定められます。:contentReference[oaicite:2]{index=2}
④ 実例でわかる“消滅しない”意味合いと注意点
例えば障害認定日から5年後に障害厚生年金の請求をした場合、基本権は時効止めの申立てで保持でき、支給自体も請求翌月から開始します。ただし、支分権(過去分の支給)は原則5年が上限です。:contentReference[oaicite:3]{index=3}
もし、請求前に症状が悪化し、事後重症請求で認められれば、請求翌月から新たに受給権が発生する点も押さえておきましょう。
⑤ まとめ(まとめ)
・受給権(基本権)は時効援用しない申立てにより消滅しない
・事後重症請求は別制度であり、「受給権消滅」とは別のタイミングで発生
・併給可否は併合認定など制度による
・時効援用による支分権(過去支給)は5年以内が上限
正しい運用と請求の仕方を理解し、権利を最大限活用できるよう制度を押さえておきましょう。
コメント