企業活動の中で避けて通れないのが「決算予測」です。特に、期末を控えてボーナス支給や納税準備の参考とするために、予測数字の精度は重要です。しかし、「税引前で予測するのか?」「税引後で試算すべきか?」といった基本的な疑問に直面することもあります。本記事では、目的別に決算予測の基本を整理しながら、実務で役立つポイントを解説します。
決算予測とは何か?
決算予測とは、現時点の実績に基づき、年度末における財務状況(売上、利益、納税額など)を見積もる作業です。社内では役員報酬や賞与の決定、資金繰りの見通しに用いられ、社外では銀行や投資家への説明にも使われます。
一般的には、月次の累計実績+残り月の予想値を加えて「税引前当期純利益」や「経常利益」ベースで試算することが多いです。
税引前で予測するのが基本
決算予測は通常、「税引前利益(法人税等を控除する前の利益)」で試算します。なぜなら、法人税等は利益に基づいて後から計算されるため、まず利益ベースを確定しないと税額も決まりません。
たとえば「期末利益が800万円になりそうだ」と予測すれば、そこから法人税等を逆算して、「手元に残る利益」や「賞与の原資」が明確になります。
税引後利益が必要なケースとは?
一方で、税引後利益での試算が必要になる場面もあります。たとえば「従業員への決算賞与の支給判断」や「役員報酬の再設定」など、最終的に企業に残るキャッシュベースでの判断が必要なときです。
注意点として、法人税の中間納付や源泉徴収などはキャッシュフローに影響を与えるため、税引前試算だけで安心しないことが重要です。
源泉や中間納付はどう扱う?
源泉所得税(例:役員報酬・従業員給与からの控除)や法人税の中間納付は、すでに支払った分があれば「仮払税金」として会計処理されており、決算予測には影響します。
予測時には「仮払額」と「決算で発生する税額」を加味して、納税キャッシュの実態を把握する必要があります。
実務に役立つ簡易試算の流れ
以下の流れで決算予測を行うと実務的です。
- ① 月次決算をベースに累計利益を算出
- ② 残り月の利益見込みを加算
- ③ 税引前利益を算出
- ④ 法人税等(概算)を控除し、税引後利益を仮計算
- ⑤ 仮払税金や中間納付を考慮し、納税資金を見積もる
これにより、「賞与原資にいくら使えるか」「今後の節税策の余地があるか」などの判断も容易になります。
決算予測とボーナスの関係
企業が従業員や役員に対して決算賞与を支払う際、財務余力があるかどうかを判断するために決算予測が用いられます。税引前利益であれば税負担を含めて考える必要があるため、税引後のキャッシュを見積もってから支給額を決定するのが一般的です。
特に源泉税分のキャッシュアウトもあるため、「支給総額だけで判断しない」ことが実務では重要です。
まとめ:目的に応じた予測方法がカギ
決算予測は基本的に税引前で行うのが標準ですが、賞与判断や資金繰り分析の際には税引後ベースでの補足が不可欠です。また、源泉所得税や中間納付なども含めて、キャッシュベースでの実態把握が求められます。
予測精度を上げるには、税理士などの専門家のサポートを活用しながら、目的別にシナリオを使い分けることが大切です。
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