年収106万円の壁が注目される中で、「短期勤務でも社会保険に入らなければいけないのか?」という疑問を持つ人が増えています。とくに1〜2か月の短期勤務や週20時間超の労働が該当するかどうかは、理解しづらい点でもあります。本記事では、そのような疑問に対し、現行制度のもとでの社会保険加入条件をわかりやすく解説します。
社会保険の加入条件は年収だけではない
年収106万円というラインがよく話題になりますが、実際には「年収」「勤務時間」「雇用期間」「勤務先の規模」など、複数の条件で判断されます。厚生年金・健康保険(被用者保険)への加入が義務づけられる条件は以下の通りです。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上(年収約106万円)
- 2か月超の雇用見込みがある
- 学生でない
- 勤務先の従業員数が101人以上(2024年10月以降は51人以上に拡大)
1か月の短期勤務でも加入対象になる?
原則として、2か月以内の雇用契約であれば社会保険の加入対象外です。たとえば、「1か月だけのアルバイト契約」や「2週間だけの業務」は、“臨時的な就労”と見なされ、たとえ週20時間を超えていても加入義務は発生しません。
ただし、雇用契約が形式的には1か月でも、実態として更新が繰り返される見込みがある場合は、加入対象と見なされることがあります。労働基準監督署などは「形式より実態」を重視して判断します。
週20時間超の勤務は重要な基準
社会保険加入の要件として、週20時間を超えて働いているかどうかは非常に重要です。これは、フルタイム労働者の所定労働時間(週40時間)の半分にあたるため、保険適用の最低ラインとされます。
仮に、短期であっても「2か月以上の勤務予定」で「週20時間を超える」勤務がある場合は、加入対象になる可能性が高まります。
2か月を超える雇用見込みとは?
「雇用見込みが2か月を超えるかどうか」は、企業が提示する契約期間に加え、過去の更新実績や今後の予定も含めて判断されます。つまり、「毎月契約を更新して働き続ける形」で実質的に3か月以上働いているなら、社会保険の加入対象となる可能性があります。
雇用契約書の内容と勤務実態が乖離している場合、会社側が未加入を正当化できないこともあります。
実例:短期アルバイトと社会保険
例えば、ある女性が年末年始の繁忙期にスーパーで1か月間だけ週25時間働いたとします。このケースでは、雇用期間が2か月未満のため社会保険には加入しなくてよいとされます。
しかし、同じ女性がその後も契約を更新し、3か月、4か月と働き続けた場合には、加入義務が発生する可能性が高くなります。実際に、同様のケースで労基署から指導が入る事例もあります。
まとめ:ポイントは「実態」と「期間」
年収106万円の壁は重要ですが、社会保険の加入条件はそれだけではありません。週20時間超の勤務でも、「2か月以内の雇用」であれば原則として対象外ですが、実態がそれを超えていれば加入義務が生じる場合があります。
短期契約であっても、働き方の実態次第では社会保険が必要になることを理解し、雇用契約書や勤務時間の記録をきちんと管理しておくことが大切です。
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