国民年金制度では、一定の条件を満たして亡くなった方に対して「死亡一時金」が支給されることがあります。ただし、すでに遺族年金を受け取っていた方が亡くなった場合、この制度が適用されるのかどうか、疑問に思う方も多いでしょう。この記事では、死亡一時金の制度概要と遺族年金との関係、請求可能かどうかの判断基準を詳しく解説します。
国民年金の死亡一時金とは?
死亡一時金は、保険料を納めた被保険者が年金を受け取らずに亡くなった場合、遺族に一定の金額が支給される制度です。支給額は保険料納付期間に応じて12万円〜32万円の範囲です(2024年度時点)。
これは老齢基礎年金などの受給前に亡くなった場合の“代替的な保障”とされています。
死亡一時金の支給条件
支給には以下の5つの条件すべてを満たす必要があります。
- 保険料納付済期間が36月以上あること
- 老齢基礎年金や障害基礎年金を受けていなかったこと
- 死亡した本人が第1号被保険者であったこと
- 死亡した年度の翌年度末までに請求すること
- 遺族基礎年金を受け取っていないこと
この中でも重要なのが、遺族年金を受けていた場合には死亡一時金を受け取れないという点です。
遺族年金と死亡一時金は併給不可
死亡一時金と遺族基礎年金(または寡婦年金)は、同時に受け取ることができません。制度上、重複支給は認められておらず、どちらか一方しか選べません。
ただし、遺族年金の受給がない場合、または年金請求前に亡くなったなどで実際に年金が支給されていなかった場合は、死亡一時金の支給対象となることがあります。
実例:遺族年金受給者が亡くなったケース
例えば、Aさん(被保険者)が亡くなった際に、妻Bさんが遺族基礎年金を受給。その後、Bさん自身が亡くなった場合、Bさんの遺族は死亡一時金を請求できません。なぜなら、Aさん死亡時に既に遺族年金が支給されていたためです。
一方、Cさんが保険料を納めていたものの、年金請求前に死亡し、その遺族も年金を受け取らなかった場合、死亡一時金の請求が可能となります。
請求先・必要書類と手続きの流れ
請求は亡くなった方の住所地を管轄する年金事務所へ行います。必要書類には以下が含まれます。
- 死亡一時金裁定請求書
- 故人の年金記録がわかる書類(基礎年金番号通知書など)
- 死亡診断書の写し
- 請求者の身元確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 振込口座が確認できる書類
通常、請求から支給までは約1〜2か月程度かかります。
まとめ
国民年金の死亡一時金は、遺族年金や寡婦年金と併用できません。すでに遺族年金を受給していた方が亡くなった場合、その方の死亡に対して死亡一時金を新たに請求することはできないのが原則です。
支給可否の判断は年金制度の併給制限ルールに基づくため、不安がある場合は事前に年金事務所や街角の年金相談センターに相談することをおすすめします。
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