老齢基礎年金の繰上げと障害・遺族年金の関係を徹底解説|附則9条の2の3の意義とは

年金

老齢基礎年金の繰上げ受給を検討している方にとって、障害基礎年金や遺族基礎年金との関係は見落とせない重要なポイントです。特に国民年金法附則第9条の2の3の規定には、老齢年金繰上げにより一部の障害年金が受け取れなくなる旨が記載されており、内容を正しく理解することで不利益を避けることができます。

老齢基礎年金を繰上げると受け取れない障害年金とは?

附則第9条の2の3は、老齢基礎年金を60歳から繰上げ受給した場合、その後に事後重症や基準障害に該当しても障害基礎年金は支給されないと定めています。

この「事後重症」とは、初診日には障害の程度に達していなかったが、後から障害状態になった場合を指します。一方、「基準障害」は、一定の障害認定基準に該当する身体障害などがあることを示します。

つまり、老齢年金を繰上げて受け始めた後に障害の程度に達しても、事後重症や基準障害に基づく障害基礎年金は原則不支給となるのです。

他の障害年金は支給対象になる?

附則で除外されているのはあくまで「事後重症」と「基準障害」による障害基礎年金であり、それ以外のケース、たとえば初診日が繰上げ前にある障害年金については対象となる可能性があります。

また、厚生年金加入者が対象となる障害厚生年金については、繰上げの影響を受けないため、該当すれば受け取ることができます。

遺族基礎年金との関係性

遺族基礎年金は亡くなった方が基礎年金の受給資格を有していたことや、子のある配偶者がいることなどの条件により支給される年金です。老齢基礎年金の繰上げ受給をしていたからといって、遺族が受け取る遺族基礎年金が受給不可になることはありません。

ただし、原則として基礎年金は「老齢・障害・遺族」のいずれか一つしか受給できない制度設計になっています。このルールは“併給調整”と呼ばれ、複数の年金が該当した場合はどれを受給するかの選択が必要になります。

附則9条の2の3の法的な意義とは?

では、なぜこのような条文が必要なのか。結論から言えば、老齢基礎年金の繰上げ制度と障害年金の支給要件が時間的に重なる場合の不整合を回避するためです。

たとえば、60歳から繰上げ受給を開始し65歳未満の間に障害状態になったとしても、既に老齢年金を受給しているため、後から障害年金を新たに請求されることを制度的に制限しているわけです。

併給できるケースとできないケース

年金の併給は原則不可ですが、例外もあります。以下のようなパターンが存在します。

  • 老齢厚生年金+遺族基礎年金:可能
  • 障害厚生年金+老齢基礎年金:不可(障害年金優先)
  • 老齢基礎年金+遺族厚生年金:可能

このように年金の種類によっては、併給が認められるケースも存在するため、年金制度全体を理解したうえで請求判断を行うことが重要です。

まとめ:繰上げにはデメリットもあることを理解しよう

老齢基礎年金を繰上げて受給することで、一定の障害年金(事後重症・基準障害)の受給権を失う可能性があります。このため、将来的に健康面に不安がある方や障害年金の受給資格が生じる可能性がある方は、安易な繰上げを避け、慎重に判断する必要があります。

制度は複雑なため、繰上げ受給や併給可否の詳細は年金事務所や社会保険労務士への相談もおすすめです。

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