人はお金に関する選択を迫られると、論理的な判断だけでなく感情や性格、経験に基づいた意思決定を行います。「絶対に100万円がもらえる」と「90%の確率で120万円がもらえる」──この2択から見える人間の行動心理と、実際の意思決定にどう活かせるかを考察します。
選択肢の期待値を計算してみよう
まず、期待値(平均的なリターン)を計算すると、100万円はそのまま100万円。対して90%で120万円がもらえる選択肢の期待値は、120万円 × 90% = 108万円です。
この結果だけを見れば、合理的には90%で120万円を選ぶのが“お得”です。しかし、実際には多くの人が100万円を選びがちです。なぜでしょうか?
プロスペクト理論でわかる人間の選択傾向
ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが提唱した「プロスペクト理論」によれば、人は損失を強く嫌う傾向があります。確実に得られる利益(100万円)を失うリスク(10%の確率で0円)を過大評価し、より“安全”な選択肢に傾きやすいのです。
この理論に基づくと、多くの人が100万円を選ぶのは非合理ではなく、“人間らしい”選択ともいえます。
実例:宝くじと保険から考えるリスク選好と回避
たとえば宝くじは、極めて低い確率で高額当選を狙うという意味で、リスク好き(リスクテイカー)の象徴です。一方、保険は確実にお金を支払いながらも、損失リスクを軽減するという意味でリスク回避(リスクアバーター)に該当します。
この2つは対極ですが、実際にはどちらも日常生活で使われており、場面に応じて人の判断は変わるのです。
性格や経験が選択に与える影響
安定志向な人や、過去にリスクを取って失敗した経験がある人は、確実に得られる100万円を選ぶ傾向が強くなります。一方、起業家タイプや投資慣れしている人は、リスクをチャンスととらえて期待値の高い選択肢を取る傾向があります。
どちらの選択肢が“正しい”わけではありません。選ぶべきは、自分の性格や目的に合った選択肢なのです。
行動経済学から学ぶ賢い意思決定
行動経済学では、選択の際に「感情バイアス」や「確実性効果」が意思決定を歪めることが知られています。これらを理解することで、自分の判断が感情に流されていないかをチェックする手がかりになります。
また、同じ状況でも選択の「フレーミング(表現のされ方)」次第で選択が変わることもあるため、客観的な視点を持つことが重要です。
まとめ:あなたにとっての最適解とは
「絶対に100万円」か「90%で120万円」か。この選択は、合理性、感情、リスク許容度、経験といったさまざまな要素によって左右されます。数字だけでなく、自分の価値観や目的に照らして判断することが、最も納得のいく意思決定につながるのです。
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