相続に関する話題の中でよく耳にする「名義預金」。相続税の課税対象になると聞いたことがある方も多いかもしれません。では、もし被相続人の財産総額が相続税の基礎控除額以内だった場合、「名義預金」も気にする必要はないのでしょうか?本記事では、その疑問に対する考え方と、実際に注意すべきポイントについて、税務の専門的観点から解説します。
名義預金とは何か?その基本的な仕組み
名義預金とは、見た目上は配偶者や子どもなど他人名義の預金であっても、実質的には被相続人(亡くなった人)の財産であると判断される預金のことです。たとえば、父親が娘名義で預金口座を開設し、実際の資金の出処も運用も父親だった場合、その預金は父親の財産とみなされます。
名義が誰であっても、実態が被相続人の管理下にあれば「名義預金」とされ、相続税の課税対象に含まれることになります。
相続税の基礎控除と課税の関係
相続税には基礎控除があります。2025年現在、基礎控除の計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。
たとえば、相続人が配偶者と子1人の合計2人であれば、基礎控除は4,200万円(3,000万+600万×2)になります。この金額以下であれば、たとえ名義預金を含めた全体の相続財産がそれを超えなければ、相続税は発生しません。
名義預金がある場合でも税務署は注目する
注意すべき点は、相続税の申告が不要な場合でも、名義預金の有無は税務署が調査する対象となる可能性があるということです。特に名義預金が不自然に多く、かつ定期的に贈与税の申告がされていない場合などは、贈与税の遡及課税対象となる場合もあります。
たとえ課税対象にならない場合でも、帳簿や通帳、資金の流れが明確でない場合は、後々の親族間のトラブルの元になることも少なくありません。
名義預金のリスクと対処方法
名義預金は「相続税回避」の意図があると疑われやすく、税務署が重点的に調査するポイントです。たとえば次のようなケースは典型です。
- 孫名義の口座だが、入金は祖父が行っていた
- 通帳や印鑑は被相続人が保管していた
- 贈与契約書がない・贈与税の申告がされていない
このような場合は、相続財産とみなされる可能性が高くなります。対応策としては、贈与契約書を取り交わす、贈与税の申告を行う、資金管理を明確に分離するといった対処が必要です。
少額だからと安心せず、名義預金の整理を
仮に相続税がかからない程度の財産規模であっても、名義預金が将来の相続トラブルの種になる可能性は残ります。特に兄弟間での不平等感が出たときなどに、「あれは名義だけ違うが父の財産だった」と主張されるケースは珍しくありません。
相続対策=節税対策だけではないという視点を持ち、名義預金をきちんと整理しておくことが大切です。
まとめ:基礎控除内でも名義預金は「整理」すべき
名義預金は、相続税の課税・非課税に関係なく、実態に基づいて扱われます。財産が基礎控除内に収まっていたとしても、税務署の調査や将来的な家族トラブルを防ぐために、名義預金の整理・証明・記録は必須です。
「税金がかからないから」と放置せず、信頼できる税理士などに相談して、名義預金が明確に区分されるように備えておきましょう。
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