近年議論されている「基礎年金の底上げ」は、高齢者の生活保障を強化する政策の一環として注目されています。しかし、「厚生年金を納めた人が損をするのでは?」と感じる方も少なくありません。本記事では、年金制度の仕組みや財源、そして「公平性」をめぐる議論についてわかりやすく解説していきます。
基礎年金と厚生年金の違いを整理しよう
まず年金制度の基本構造を確認しましょう。日本の公的年金は2階建てで構成されています。
- 1階:基礎年金(国民年金)…全国民が対象
- 2階:厚生年金…会社員や公務員などが対象
つまり、厚生年金に加入している人も、国民年金(基礎年金)の保険料を支払っているということです。
基礎年金の底上げとは何か?
基礎年金の底上げとは、低年金・無年金の高齢者に対する所得保障を強化するため、基礎年金部分の支給額を引き上げる政策を指します。
具体的には、低所得世帯に対し加算措置を導入したり、最低保障年金制度を検討するなどの案があります。ただし、財源には限界があり、厚生年金保険料や税金がその一部に使われる構想があるのです。
なぜ厚生年金加入者が「損をする」と感じるのか
厚生年金加入者は、基礎年金分に加えて上乗せの保険料も支払い、将来的に上乗せの年金を受け取る仕組みです。そのため、「自分たちの積立金が、国民年金だけの人の底上げに回されるのでは?」という不満や不安が生まれます。
たとえば、長年会社勤めをして年金保険料を高く納めてきた人からすれば、何の追加負担もしていない国民年金加入者に恩恵があると、不公平と感じるのは自然な感情です。
実際に公平性は保たれているのか?
制度設計の観点から言えば、厚生年金保険料は、厚生年金加入者自身の給付と再分配に充てられています。したがって、完全に他の層へ「持ち出し」になるわけではありません。
ただし、政策的に「基礎年金全体の底上げ」が行われた場合、結果的に厚生年金加入者の支払いが一部間接的に国民年金のみに加入していた人へも恩恵となる構造は否定できません。
評論家の説明は「詭弁」か?その真意を考える
評論家が「厚生年金の人も基礎年金が増えるので損はない」と説明するのは、確かに一部だけを切り取れば正しい側面もあります。厚生年金加入者も基礎年金を受け取るため、底上げの恩恵を受けることになります。
しかし、問題はその原資にあり、自分の拠出した保険料の一部が他人の底上げにも回るとなれば、それを「公平」と言い切るのは難しいという指摘にも一理あります。評論家の主張は制度上の「理屈」としては成り立ちますが、感情面や倫理面での納得感には乏しいのです。
今後の議論の焦点:負担と給付のバランス
今後の年金改革では、少子高齢化による現役世代の負担増が避けられない中、財源の在り方や所得再分配の公平性が重要な論点となります。
特に、生活困窮層の救済と制度全体の信頼維持のバランスが求められます。厚生年金加入者から見た不公平感を軽視すれば、制度への信頼が損なわれ、長期的には維持が困難になるリスクもあるでしょう。
まとめ:厚生年金加入者が抱える疑問は制度の見直し議論の起点に
基礎年金の底上げに対する「損なのでは?」という疑問は、多くの現役世代や厚生年金加入者が抱く正当な関心です。
制度の公平性は単なる数式だけでなく、国民一人ひとりの納得感によって支えられています。今後の制度設計では、より透明で丁寧な説明と、公平性を保つバランス感覚が求められていくでしょう。
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