子どもが大学在学中に借りた奨学金。社会人になって返済を始めたものの、親としては負担を軽くしてあげたいと思い、一括で返済を肩代わりするケースもあるでしょう。しかし、そこには税務上の問題が潜んでいます。本記事では、親が子どもの奨学金を一括返済した場合に発生する可能性のある贈与税について詳しく解説します。
奨学金の返済を親が肩代わりすることの意味
奨学金の返済義務者が子ども本人である場合、その返済を親が代わりに行うと、税務上は子どもが「お金をもらった」とみなされます。これが「贈与」に該当する可能性があるのです。
贈与とは、無償で財産を譲り渡す行為を指し、年間110万円を超える部分には原則として贈与税がかかります。そのため、返済額が110万円を超えている場合は、贈与税の申告が必要になる可能性があります。
どのような場合に贈与税がかかるのか?
贈与税がかかるかどうかは、返済の「契約上の義務者」が誰かで判断されます。たとえば、奨学金の契約者および返済者が子どもであり、その返済を親が行った場合には、贈与として扱われる可能性が高くなります。
一方で、親がもともと契約者であり返済義務を負っていた場合には、贈与にはなりません。また、返済分を親に立て替えてもらい、その後子どもが返済する意思と実績があれば、贈与とはみなされにくくなります。
贈与税がかからないための工夫と対策
- 毎年110万円以内で分割返済:一括返済ではなく、数年に分けて返済することで贈与税の基礎控除内に収めることができます。
- 子どもに返済させる:親が立て替えた場合でも、後日子どもから返済されれば贈与にはあたりません。口約束ではなく、書面で「借用書」を交わすと安心です。
- 教育資金贈与の非課税制度の活用:30歳未満の子どもへの教育資金の一括贈与について、最大1,500万円まで非課税となる制度があります(一定の条件あり)。金融機関を通じた手続きが必要です。
実例:返済額が150万円だった場合
例えば、子どもが毎月1万円ずつ返済していた奨学金の残額が150万円だったとします。これを親が一括で支払うと、その150万円は「贈与」と見なされ、基礎控除110万円を差し引いた40万円に対して贈与税が課税される可能性があります。
このような場合、数年にわけて返済したり、親子間で借用書を交わし、あくまで「貸付」として処理すれば、税務上のリスクを軽減できます。
問い合わせ先と相談先
贈与税の判断や対応について不安がある場合は、以下の窓口に相談することをおすすめします。
- 国税庁(税についての一般相談)
- 税理士:個別の契約内容や状況に応じて最適なアドバイスを得ることができます。
- 市区町村の税務課:地域によっては無料の税務相談会なども開催されています。
まとめ
親が子どもの奨学金を一括返済することは、思いやりからくる行為ですが、税務上は「贈与」に該当する可能性があります。返済額や返済方法、親子間の契約内容によって課税の有無が変わってくるため、事前にしっかりと確認することが大切です。無駄な税金を払わないためにも、年間110万円以内での返済や、借用書の作成など、工夫をしながら進めましょう。
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