大学生を対象とした「給付型奨学金」は、家庭の経済状況に応じて返済不要の支援が受けられる制度として注目されています。特に「多子世帯」への優遇措置が加わったことにより、支援の幅が広がりました。しかし、奨学金の受給にあたり、学生本人の収入が一定以上あると給付対象から外れる可能性があるため、扶養や年収の壁についての正確な理解が不可欠です。本記事では、2024年度以降の制度改正を踏まえた「学生本人の年収制限」と「多子世帯の収入要件」について解説します。
給付型奨学金の基本|対象と年収要件の仕組み
文部科学省が所管する「高等教育の修学支援新制度(給付型奨学金+授業料減免)」は、世帯の所得水準に応じて支援区分(第Ⅰ区分~第Ⅲ区分)に分かれます。学生本人や世帯の収入によって受給の可否や支給額が変わります。
2024年度からは第Ⅰ子・第Ⅱ子・第Ⅲ子以降で支給水準が変動する「多子世帯向け加算」も導入され、より柔軟な運用がされています。
学生本人の収入に関する基準:年間103万円と123万円
学生がアルバイトなどで収入を得る場合、扶養の範囲を超えないよう注意が必要です。
- 103万円:所得税・住民税の非課税ライン(扶養控除に影響)
- 123万円:給付型奨学金における学生本人の収入制限(目安)
給付型奨学金に関しては、学生本人の年間所得が123万円を超えると「自立して生活できる」と判断され、給付の対象から外れるリスクがあります。
そのため、たとえ2023年度から扶養控除の上限が150万円に引き上げられても、奨学金の適用判断は税制上とは別に行われる点に注意が必要です。
多子世帯の給付型奨学金:年収の上限は変わる?
多子世帯とは、18歳未満の扶養親族が複数いる世帯のことで、子どもが3人以上の家庭が該当します。
この世帯区分では、親の年収の上限が緩和され、第Ⅰ区分の適用がより広がるようになっています。ただし、学生本人の収入制限(123万円程度)については変更なしとされています。
したがって、学生自身が多子世帯に属していても、収入が多ければ給付型奨学金から除外される可能性があります。
具体例で見る:収入による影響と注意点
たとえば夜間大学に通うAさんが、年収125万円(アルバイト)を得ている場合、保護者の収入が奨学金の基準内でも、本人の所得超過により支給停止になるリスクがあります。
一方、年収が120万円であれば、扶養内・非課税・奨学金支給対象のすべてを満たす可能性があります。このように、数万円の差が制度適用の分かれ目となることがあるため、年間収入の計画的な管理が求められます。
扶養控除の150万円と奨学金の基準の違いに注意
2023年以降、学生扶養控除の判定基準が「103万円→150万円」に引き上げられましたが、これはあくまで保護者の税負担を軽減する制度上の変更であり、給付型奨学金の収入上限とは無関係です。
奨学金制度ではあくまで「本人の所得が一定以下であること」が条件であり、123万円程度が目安とされています。
まとめ:給付型奨学金を維持するには年収123万円未満を目安に
給付型奨学金を受け続けたい学生は、たとえ扶養控除の基準が150万円に緩和されたとしても、年収123万円未満を目標に収入を調整するのが安全です。
特に多子世帯の支援拡充によって保護者側の収入条件が緩和されていても、学生本人の収入基準は別物である点を理解し、アルバイトの時間や金額の調整を計画的に行うことが重要です。
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