年金制度の見直しが進められる中、「厚生年金の積立金を国民年金に回すことで、厚生年金の給付が下がる」といった報道に不安を感じた方も多いのではないでしょうか。テレビでは「一時的に下がる」と表現されましたが、「ずっと下がるのでは」との声も上がっています。この記事では、制度の仕組みと背景から、この問題をわかりやすく整理し、将来の影響を見通します。
そもそも厚生年金と国民年金の違いとは?
日本の年金制度は2階建て構造となっており、すべての人が加入する基礎年金(国民年金)と、会社員や公務員が加入する厚生年金で構成されています。
- 国民年金:自営業や学生などが対象。定額の保険料で基礎的な年金を支給。
- 厚生年金:会社員・公務員が対象。給与比例の保険料で上乗せ年金を支給。
厚生年金の方が保険料も給付額も大きく、積立金の残高も多いのが特徴です。
積立金の一部を国民年金に移す理由
政府が検討している「積立金の移転」は、年金制度の格差是正と将来の持続性を目的としています。
現在、国民年金の給付水準は非常に低く、将来的に高齢者の生活困窮を招く懸念が強いため、厚生年金の積立金を一部移すことで基礎年金を底上げしようという狙いがあります。
これは高齢者全体の貧困率を下げ、生活保護の財政負担も抑えるという意義を持ちます。
給付水準は「一時的に下がる」か「ずっと下がる」のか
ここで多くの方が疑問に思うのが、「厚生年金の給付が一時的に下がる」という表現の真意です。
結論から言えば、“将来的に下がる可能性はあるが、必ずしも“ずっと”ではないというのが実態です。
理由は以下のとおりです。
- 現在の積立金はあくまで将来の支払い準備金であり、一部を使っても持続可能性が確保されていれば給付に大きな影響を与えない
- マクロ経済スライドにより、物価や賃金の伸びに応じて自動調整が行われるため、一定の調整は制度全体に影響する
- 仮に給付水準を維持するためには、保険料引き上げや財政投入などの制度的対応が行われる可能性もある
過去にもあった?制度変更での給付水準調整
2004年の年金制度改正では、将来の給付水準を安定させるために「マクロ経済スライド」が導入され、物価上昇よりも年金額が緩やかに伸びる仕組みが取り入れられました。
これにより、実質的に「給付水準は少しずつ下がる」ことになりますが、制度全体の維持のための措置として受け入れられてきました。
今回の積立金移転も、このような調整策の一環として考えられています。
将来への影響と備え方
厚生年金の給付水準が将来的に若干抑えられる可能性はありますが、制度崩壊レベルの変化ではなく、徐々に調整される範囲にとどまると見られています。
それでも不安な方は、以下のような対策を検討すると良いでしょう。
- iDeCo(個人型確定拠出年金)などの自助努力
- 企業型DCや退職金制度の確認
- 生活費のダウンサイジングや家計見直し
まとめ:年金制度改革は“一部調整”であって“給付カット”ではない
厚生年金から国民年金への積立金移転は、社会全体の底上げを目的とした調整策であり、一時的な影響や将来のスライド調整はあっても、「ずっと下がる」という表現は正確ではありません。
重要なのは、制度の持続可能性とバランスを保ちながら、個人でも備える意識を持つことです。制度改正の動向を注視しつつ、自分にできる老後資金対策も進めていきましょう。
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