気候変動の影響で、雹害・台風・猛暑などによる農作物被害が増えている今、農家経営にとって「収入保険」はますます重要な備えになっています。特に果樹農家のように収穫までの期間が長く、自然災害による被害が大きくなりやすい作物を扱う方には、その活用価値が高まっています。この記事では、過去に収入保険に不満を感じていた方にも改めて検討してほしい、現在の収入保険の制度内容と実際の活用ポイントを解説します。
収入保険とは?これまでの制度との違い
収入保険制度は、農業経営者の「収入減少」を補てんするための制度で、2019年から本格的に全国導入されています。それ以前の「ナラシ対策」や「農業共済」は、作物ごとの災害リスクに応じて補償されていましたが、収入保険は作物を問わず「農業所得全体」をカバーできるのが特徴です。
これにより、複数作物を扱う果樹農家や、販売先の変化などにも柔軟に対応できる制度として、徐々に支持を集めています。
収入保険が適用されるケースの具体例
たとえば、以下のようなケースで収入保険が活用されます。
- 雹や台風による収穫量の激減
- 市場価格の大幅下落による販売収入の低下
- 病害虫被害による品質不良
たとえ農作物が「全滅」しなくても、前年に比べて一定割合(原則15%以上)の収入減が発生した場合に補填の対象となります。
加入に必要な条件と注意点
収入保険に加入するためには以下の条件があります。
- 青色申告を2年以上実施していること(初年度は1年分でOK)
- 農業経営に収入依存していること
- 農業者本人が加入申請をすること
以前に「保険金が出なかった」と感じたケースでは、保険金の計算対象となる収入が要件を満たしていなかった、または適用条件外だった可能性もあります。加入前に内容をよく確認し、地元のJAやNOSAI担当者と相談することが大切です。
加入のメリットが高まるタイミングとは
以下のような変化があると、収入保険の加入メリットが高くなります。
- 作付面積の拡大により、経営リスクも増している
- 気象災害の頻発で収穫不安が強まっている
- 販売チャネルが安定していない、または価格変動が激しい
特に、面積や収穫量が増えている果樹農家の場合は、収入の絶対額が大きくなる分、保険で守れる利益も増えるため、費用対効果の点でも再検討する価値があります。
実際の農家の声と活用事例
ある山梨県の桃農家では、2021年の雹被害で約40%の収入減となった際、収入保険に加入していたことで約120万円の補填を受けることができました。補償があったおかげで来季の資材購入や剪定作業が予定通りに進められ、経営に大きな支障をきたさずに済んだとのことです。
また、別のぶどう農家では、販売価格の下落で収益が前年より20%以上減少しましたが、補填金により翌年の人件費を賄えたという声もあります。
まとめ:収入保険は“入らないリスク”も含めて再検討を
過去の経験から収入保険に不信感を抱いている方も、制度が改正・改善されてきている現在こそ、もう一度見直すタイミングかもしれません。特に面積拡大・収入増加が見込まれる今だからこそ、“万が一”への備えは農業経営の安定に直結します。地域のNOSAIやJAと相談し、納得した上で判断することが、今後の経営リスクに強い選択肢となるでしょう。
コメント